第9.5話

Side:レンタルポーターの店員さん


「ふぅ、午前中の予約客は全員掃けたか」


世間はGWだが俺は仕事だ。そういう仕事だから仕方ないが。


「しかし便利になったもんだよなぁ」


午後から貸し出し予定のレンタルポーターを見て改めて思う。

数年前までレンタカー屋に勤めていた身としては、モノを貸し出すという点では同じなのだが、客層も扱うものも全然違う。

何より給与が良かったので転職して正解だった。


レンタルポーターは今やダンジョン探索だけでなく、登山やキャンプといったアウトドアでも大人気だ。

特に登山なんて、自分の足ではなくポーターに乗って山を登る「ポーター登山」なんてのも流行ってるらしい。


ただ、やっぱり一番多いのはダンジョン利用者だな。特にこの「万博ダンジョン」は都市部からアクセスも良いから、手軽に潜りたいという人が多い。

うちの店でレンタルポーターを借りていく客のほとんどは、1泊2日だ。

聞けば、7層が安全な広場になっていて、そこで一泊して帰ってくるパターンが多いんだとか。

まあ、それ以上潜ると敵も強くなるし、何より精神的、体力的な集中力も持たないだろう。


「そういえば、今日で2日目か…」


ふと、貸出リストを見て気になった客がいた。深洞雫さん。5泊6日で借りていったんだよな、この人。

いままでで最長は3泊の客だったけど、それ以上の長期でダンジョンに潜るなんて話はほとんど聞かない。

さすがに深層を目指すプロの探索者でも、パーティならともかく、ソロでそんな無茶はしないだろう。集中力が途切れれば命に関わる。


「ま、きっとダンジョンで2泊ぐらいして、どこか近場の山にでもポーターに乗って登山にでも行ったんだろうな」


きっとそうだ。こんな普通そうな人がいきなり5泊もダンジョンに潜るなんて考えられない。


過去には、ポーターに担がれて這々の体で戻ってきた客もいた。

慌てて救急車を呼んだり、怪我の手当を手伝ったりあの時は焦ったなぁ…ああいうの見ると、ダンジョンの怖さを思い知らされる。


「深洞さんも、無事に帰ってきてくれてればいいけどな」


特に根拠はないが、なんとなくリストの名前を見ながらそう思った。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る