第20話土地神様、西園寺家に行く

「さて、行きますか。西園寺家へ」


「い、行きますかって…どうやって行くのさ。」

 まあ、葵ちゃんはそう言うと思ったよ。

 今出来るか、なんてことは知らないけどウチの力はこうしてまだ残ってるのだから事くらいいけるでしょ。


「ねぇ、もしかして……」


「そのまさかだよ、カンナちゃんよく掴まっててね」


「あ……わかった……」

 なんでそんな絶望した顔を。

 失礼な、ウチの跳び方はそんなに危険な跳び方じゃないし。

 ちょっと乱暴なだけだし。


「よし、二人ともいくよ!!」


 天よ、穿つ光よ。

 この空間において、我を彼の地へ移せ!!


 ー地異転変!!ー


 その刹那、一瞬にして空間が歪みウチらを白い光が包む。

 どこか、懐かしい雰囲気を感じてしまうのは気のせいだろうなと思いつつウチ達を嫌な嫌な西園寺家の分家の場所へとたどり着かせる。


 地異天変とは、そういう術式なのだ。


「ん……つ、着いてる?」


「さすがだ…というか、門の前に転移じゃなくてせめて部屋の中の方が良かったんじゃないか?」


「あ、それウチも思った。」

 てか、絶対今の状態周りに人がいたら目立つよな……

 ちょっとそれは失敗だったかも。

 まあでも、いいのならその門を吹き飛ばしてしまおうか。


「それはダメだよ?」


「……はい、すみません……」


「まあ、私もそうしたいけどさ……」

 だよねぇ……

 まあ、実際恨みがあるって言ってたしあんな奴らなんだ。吹き飛ばしたところで文句も何も無いだろう。

 それで?ここに来たとはいえ、どうやって中に入ろうかってなるけど……


「ん?葵様?もう来られたのですか?」

 門から薄紫の着物を着た老人がやって来た、見た感じ侍女だろうか。


「はい、おと…いえ、当主から連れて来いと言われたので」


「そうですか、それでは中にお入りください。そちらの化け物共も一緒に」

 ……

 なるほど、こいつは死にたいようだな。


 ━やめとけ、ここであの刀を抜こうとするな


 ―でも…カンナちゃんも馬鹿にされるなんて……


 ━いいんだよあたしは、それよりもお前が悪く言われるのがあたしにとって嫌なんだ。あたしもあいつも殺したくなるのを必死に抑えてんだ。お前も我慢しろ


 ―わかった……


 ━いい子だ。


 ―む……


 でも、ほんとにこの人達は陰陽師だったのだろうか。

 廊下を歩いて居てもウチ達を見えてる者が数名くらいしかいない始末……

 おそらく、ほんとに力を失ったと思っていいのだろうか。


 まあ、元々自分達の能力こそ最強と思ってた奴らだからしょうがないか。

 権力に縋り、地位に縋り、能力に甘え、人として最低なヤツら。

 特に、西園寺家の初代当主はほんとに最低で最後の最後まで性格とか変わることなんて無かった。


 どうせ、今も変わらないだろうな。

 当主なんて。


「旦那様、連れてまいりました。」


「失礼します」

 そう言うと、無言で障子が開いた。

 この時点でもう傲慢さがよく分かる。

 普通なら「入れ」とか言われるはずだし、それで?無言ですか。

 どれだけ自分の地位が高いと思ってるんだよ。


 そして、ほんとに案の定ウチが想像した通り灰色の着物を着てどこか不満そうな顔をしつつ無愛想な感じの雰囲気が感じる当主だなと思った。


「よく来たな。」


「……」


「また、黙りか。それとも思考を飛ばして会話をしてるとでも?」

 陰陽師ならそれぐらい出来ると思ったんだけど。

 もしかして、こいつは出来ないのか?


 いや、もしかして葵ちゃんが異質なのか……

 それは分からないけれど、でも……そうだとしたら掟に引っかかるはずなのにそんなことがない。

 なら、この子はほんとに何か、特別なものがあるんだろうなって事がよく分かる。


「ほら、葵。なんとか言ってみろ、お前の力は幻想だということを」


「……なぜそうなるのですか」


 考え事してたらいきなりそんな会話を聞いてしまった。

 ほお?幻想と決めつけるか。


「そこに神がいるのなど信じられるか。妖怪……化け物共の同じ気配がするではないか。」


「はぁ……まだ信じてないんですね。カンナちゃんのことも。巴さんのことも。」


「信じるもなにも、神など所詮は化け物ということだよ。妖怪のように暴れ、狂い、そして我々が祓わなければならない。」


「……意味がわからない」

 ほんとにその通りだ。

 意味がわからないし会話にならない。

 こいつは、やっぱり生かしておけないだろう。殺すか。


「なんだ化け物その目は」


「はっ……人間風情が、化け物と言えば神も仏もそういうものとして扱えるような言い草をしやがって。」


「そうだろう?神なんぞそんなものさ、人を守るという名目を持ちながら結局人を殺す、 あの十年前の時もそうだった。西園寺家を根絶やしにしようとしたこと、忘れてないぞ!!」


 ああ……あの時の事か。

 でも、西園寺家が黒幕だったから殺そうとしただけで、それで被害者ぶるのはほんとに卑怯者としか、言いようがないけど?


「え……?そうなの?」

 と、葵ちゃんが問いかける。

 まあ、帰った時に真実を伝えるけど……


「ああ、そうだよ。この神はな、白い陰陽師という化け物を放ち我々の西園寺家を襲撃させ挙句の果てにはこの日本を壊滅状態寸前に追い込んだ首謀者なのにも関わらず我々西園寺家を滅ぼそうとしたのだ!!」


「ふーん……」


「そして、そこのカンナというものもだ。あの時居たのなら我々を守ればよかったものを何故達観していたのか。神というのはそれほど使えないのか?」

 おい……

 今のはさすがのウチでも逆鱗に触れるぞ。

 ウチのことを悪く言ってもいいけど、カンナちゃんの事を悪く言うなよ?


 ー天に司りし雷の神よ、我の祈りに応え彼の者を滅したまえー


「巴さん!!だめ!!」


「ちっ……」

 二人が包囲の陣を構えたけど、ウチの神力が強かったからか陣が破壊される。

 当たり前だ、今のウチはこいつを殺すことしか考えてないのだから。


「なんだ?なんだ?化け物が何かしようと?」

 まだ煽るか。

 面白い。殺すためなら威力を上げてやるよ。


『どうする……でもまあ私もそろそろ我慢できなかったし早く殺したかったけど……』


『でもこいつ……』


『わかってる……でもさっき三回やってるから』


『お前も結局殺してるのかよ……まあ、止めるのなんてめんどくせえでも後悔するなよ!!』


 二人が何を言ってるのか分からない。が、こいつは動くことをしないのなら……


「雷神鳴動!!」


「八咫鏡!!」


「冥王の鼓動!!」

 ウチ達は何故か、当主に向けて技を放った。

 いや、ウチは分かるんだけど二人共放つ理由が……

 というか、さっきの会話を鑑みると……奴は死なない?


 そんな、怖い結論に至ってしまう前に技を放った場所の煙が消えた。

 そこをよく見て見てもさっきまでいた当主が居ない。


 死んだはず……なのか?

 いや、死んでるのなら……


「死ぬ?まさか、この俺に死という概念があると思うか?のう、


「「「?!」」」

 それは……

 まさか、こいつ……


「そのまさかだよ、俺は貴様が思う通り輪廻転生をして現代にいる初代西園寺家当主、西園寺蒼月さいおんじそうげつさ」


「はぁ……聞きたくなかったなぁ……」


「奇遇だ、あたしもだよ。」

 どうやらカンナちゃんも同じみたいだ。

 さあ、この状況貴様はどうする?

 蒼月、殺され続けたいか?それとも……


「君達に狙われるのは光栄な事だが、とりあえず今はお暇させてもらうよ。」


「そうしてくれ」


「私からも、良いですか」

 葵ちゃんが言いたいことあるみたいだ。

 もうこの際だ、何言ってもいいと思う。


「二度と姿を見せるな、クソジジイ」


「言われなくてもそのつもりさ、だが……掟を忘れるなよ?式神を絶対に作ってはいけないからな?」


「……」


「まあいい、とりあえずここは失礼しよう。」

 そう言い、奴は姿を消した。

 まさか、詠唱無しで出来るようになったなんて。

 あいつも成長したのか。

 腹立つ……


「まあ……とりあえず、帰ろっか。」


「うん……」


「そうだな」


 とりあえずウチ達は帰還することに決めた。

 はぁ……なんだか、宣戦布告をするような事してしまった気がする……

 後々の行動で後悔することは沢山あったのに……


 まあ、こうして奴の素性やらなにやら知れたしいいかもな。


 でも、結局はこのことがあり後悔してしまったなんて死んでも言えるわけが無い。





「ほんとに……嫌だなぁ、西園寺蒼月は。僕がして欲しくないことをしてくる。でも、バカだよねぇ。こうしてってことに気づかないなんて」



 to be continued

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