第13話受け止める勇気、私は大丈夫

 ウチの話したくなかった秘密を話してから翌日。

 葵ちゃんは変わらず接してくれているがやっぱどこか、申し訳なさを感じてしまう。

 それは、主人としてなのか。

 それとも葵ちゃんの気持ちとして、なのか。


 それともそれは、同じ陰陽師としてだからウチに対して申し訳なく思っているのか。

 そうだとしたらウチは気にしてないし全部悪いのはあいつだって言う。


 あいつが、日本武尊様の力を使いさえしなければ、特級怨霊菅原道真の封印を解きさえしなければ……

 話せないようなことになんてならなかったのに……


「はぁ……」


「巴さん、やっぱり無理して話すべきじゃなかったんじゃ……」


「ううん?!いいんだよ?別にウチは気にしてなんかないもん」


「でも……」


「ほんとだよ、もう〜心配症さんだな〜」


「む…無理しないでちゃんと言うんだよ?」


「はーい」

 無理…か。

 無理なんて、一人ぼっちになったあの日からずっとし続けてる。

 だって実際…ウチは頼る術なんて知らないし、頼る術なんて無い環境だったんだから。


 だからね。

 葵ちゃんが気に病む必要なんてない。

 神様の時は一人で生きていけたんだから。

 もう今更…他の人にウチの事を心配してもらうことなんて…必要ない。


「人は、一人では生きていけない……か」

 そんなこと、あいつもそんなことを言ってた。


『生きていけないからこそ家族を作り、子供を作る。そうしてずっと繁栄していった。だからどんどん劣等種族として完成していき終いには差別をすることでしか生きる喜びを感じなくなる。それだけはなんとしてでも避けなければならんのだ!!』


 だけど…それは違う…


『何が違う?その通りだろ?人間は誰かを貶し、貶めながら生き、自分が愛した人間としか生きれない哀れな生き物だ。』


 そんなことない……人間は…人間はそんなやわじゃ…


『じゃあ、なんだ?お前のその過去にいるは。そいつもということを薄々気付いていたのではないか?』


 黙れ…


『感情的になるか、それも結構。だが、貴様は』


「黙れ!!!!天の!!」


「澪さん!!」

 ふと静止する声が聞こえた…

 あれ?ウチは……何をしようと……

 何かを……しようとした……

 もしかして……

 この家を吹き飛ばそうと?


 それは……でも、今のウチの陣とかってやっぱり……


「澪さん…しっかりしてよ…どうしちゃったのさ……」


「葵ちゃん……ごめん……」


「もしかして、安倍道満のこと?」

 もちろん……正解だ。

 でも、その事は触れないで欲しい……頼む。


「なんで?だって私達は……」


「主従の関係。これが覆ることなんてない。」

 だってそうだ。

 実際ウチは生きたいと願って最終的にはこの子と契約した。

 主従の関係意外になにか表せられる事があるのだろうか。


「なんで…なんでそんな冷たくなれるの?」


「それは……私は…葵ちゃんと契約した式神だから…」


「そんなの関係ない。」


「関係あるよ……」

 だって、ウチのことで追い詰めたくないし……辛い思いとかさせたくない。

 葵ちゃんには笑顔でいて欲しい……

 だから…葵ちゃん、そんな悲しい顔しないで……


「悲しい顔しないでって……そんなの無理だよ……」


「……」

 そう言われても……

 ウチは…分からないよ……だって、どうしても頼れって言われても頼れない……

 頼り方を知らない…

 そもそも、ウチのほんとの秘密を知ったら葵ちゃんは絶対ウチのこと失望する……


 それが嫌だから……

 ウチは、話せない。

 話したくない。信用も信頼も……全部失ってしまうっていう恐怖があるから、葵ちゃんにも話せないんだ。


「話せなくてもいいよ…でも、これだけは信じて。私は、巴さんのこと…どんな事でも絶対受け止めるから」


「そう言われても……」


「信じられないと思う。でも、私は巴さんの事信じてるからこそ言う、抱えてる思い全部吐き出してみてよ。」

 吐き…出す…

 抱えてるもの……


「……私」


「うん、いいんだよ。いっぱい言っても」

 こんなの…言えるわけが……

 だって…言っても罪が消えるわけ…ないのに……

 でも……これを、言ってしまったら……


 どんな顔されるか……


「私、じゃないんだよ…?」


「……」


「神っていう、立場に甘んじて……陰陽師を殺してきた。四代陰陽師の一族も、無関係な人も、子供も…それに掟を……破ったりもした……神と人が混じってはいけない…その掟を!!そんなウチの事……どう信じろって言うのさ!!」

 そう言うと…優しく、抱きしめてくれた。

 ウチの、悲しみを……

 全部、全部……包み込んでくれるように。

 ウチにそっと、光が差し込むような、そんな暖かみが感じてしまう。


「巴さん…いや、澪さん。私は、千年生きた訳じゃないけど私は澪さんの事、こうやって抱きしめる位のことは出来る。それしか……出来ないけど、私澪さんの事受け止めること、抱きしめることしか出来ない。けど、私はそうやって澪さんの事支えたいんだ。」


「それは、主従の関係じゃ……なくなるよ…」


「そんなの関係ないよ。私は、私の思いがあって澪さんにそう言ってる。」

 なんで?

 なんでそこまでして、ウチなんかを包んでくれるの?

 なんで…なんでウチなんかのことを…


「ウチは…ウチは酷いことを……」


「もっと…もっと自分を大事にしてよ!!」


「え…?」

 大事にって…

 神様なんだから…大事にしなくても勝手に…生きていける…それが…ダメなの?


「澪さんは神様じゃないでしょ?もう、私のものなの……だから私の言うこと聞いてよ…ちゃんと自分の事大事にしようって思ってよ!!」


「それは…違うよ…」



「全然違くない!!最低が何?罪を持ってるが何?そんなの関係無い、私は…私は…!!澪さんが…澪さんが大好きなの!!!」



「え…?」


「どんな澪さんでもいい、罪を持ってるなら私も背負う、最低なら最高にする、私は澪さんとそうやって生きてたい!!それだけ大好きなの!!」


「葵ちゃん…」

 そんなふうに…思ってて、くれてたんだ…

 今更…葵ちゃんが泣いて、叫んでウチにそういう風に伝えたことが分かって凄く不甲斐なく思ってしまった。

 ごめん…ほんとにごめんね……


「ごめん…ごめんね…」


「許さない…澪さんが謝り続けても…絶対…絶対許さないから!!」

 と、ウチの胸に顔を埋め泣いてしまった。

 ほんとにごめんね…

 ウチのせいで…

 一番は、ちゃんと言わなかったからいけなかった……

 だからこうして…悲しませてしまった。


 だからちゃんと…葵ちゃんと一緒に…この罪や責任…諸々を背負って生きていこう。

 そうして分かちあって、分かりあっていきたい。

 ウチもそう思えた。


「あの…葵ちゃん?」


「なんですか?」


「いつまでそうしてるんですか……?」


「それは……その…いいじゃないですか」

 う…こういう時に可愛いのずるい……

 でも、だんだん恥ずかしくなってきたじゃないですか…


「これは罰です…私の気が済むまで…お願いします…」


「全くもう…心得ましたっ」


(言っちゃった…つい勢いよく好きって言っちゃった!!で、でも…間違ってないし…大好きだし…そもそも…れ、澪さんが悪いし…私はそんなに…悪くないし…)


 凄い…葵ちゃんの思考が聞こえるんだけど…

 多分本人気にしてないよね…

 でもさっきのって…どっちの意味での好きなんだろ…

 ウチが好きなのか……

 それとも…式神として、なのか。


 それは…聞かないとわかんないか。


「「あ…」」


「澪さんどうぞ…」


「葵ちゃんからいいよ」


「そ、そうですか…それなら、遠慮なく……えと…さっき言った、好きってこと……なんですけど……」

(忘れてくださいって言え私忘れてくださいって言え私……)


「それは、ウチも聞きたかったかも…」


「へ?!」

 すごい驚いた表情をしている。

 やっぱり式神として、好きってことなのかな?

 それはそれで……なんか寂しいかも…


「えと…それなんですけど……答え…待ってます……」

(ばかばかばかばかばかばか…何言ってんの?!)


 答え…待ってます…か。

 それなら…ウチも考える時間が…必要だったし。丁度いいのかもな……


「分かった。考えてみるね」


「は、は、はい!!」

 嬉しそうな、でも安心したような、そんな表情をしていた。

 可愛い葵ちゃんがより可愛く思えるから多分だけどウチも何か迷いが取れたそんな気がする。


「ちゃんと…話せそうかも」


「な、何がですか?!」

 すごい驚いた感じだ。

 もしかして、そんなにこれから話すことに関して興味があるのかな?


「う、私のことだよ。私の抱えてるもの、全部。」


「そ、そうですか…」

(なんだ…告白じゃなかったから良かったけど…昨日みたいに辛い思い、しないといいな)


「大丈夫。私は君がいるから大丈夫だよ。」


「澪さん……」


「それじゃあ話すとしますか。私がなんでひた隠しにしたかったかのか。そして、私が犯した罪の事を」

 これを話してどんな風に思われるか分からない。

 でも、受け止めてくれるって信じてるからウチも勇気を出して話そうと思う。


 to be continued

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