第2話
焼け落ちた王都の上空を、漆黒の巨体が静かに旋回していた。
超巨大殺戮ロボット《グロリア・エンド》。
全高百五十メートル、七基の魔核炉、対都市殲滅兵装を十七種搭載。——元々は、人類の生存圏を外敵から守るために造られた守護の象徴。
だが今や、それはアトワイトの意志だけに従う、忠実な破壊神だった。
「次は……フェルミナ辺境領。奴らはグラディアの犬だった。残党の掃討、完了させる」
アトワイトは、コクピットの中で目を細める。
表情は微動だにしない。だが、その内側は、はっきりと燃えていた。
かつて彼女を笑った者たち、無能と罵った貴族ども、"感情がない"と断じて排斥した世界。
それらすべてに、彼女はもう期待していなかった。
理解されることも、寄り添われることも、必要ない。
《世界》という不完全な機構に対し、彼女はただ一つの回答を用意していた。
「——制圧、完了。それでいい」
通信機から、恐慌に満ちた声が流れた。
「っ、き、貴様は何者だッ!? 貴族でも軍人でもない、ただの女だろうッ!!」
「いいえ。私は、アトワイト・グエルクス」
「……世界を正しく組み替える、者です」
次の瞬間、グロリア・エンドの胸部装甲が開き、
辺境の城は、光に飲まれて跡形もなく蒸発した。
アトワイトは、旅を続ける。
独りきりで、あまりに巨大な機体と共に。
支配者の首を刈り、王族の象徴を破壊し、虐げられた村を一度更地に戻してから再構築する。
冷酷なやり方だったが、彼女の支配下に入った土地は、必ず繁栄した。
病は治り、飢餓は消え、人々は働き、眠り、恐怖から解放されていた。
彼女の機械のような判断と行動は、次第に「神の代行者」とまで呼ばれるようになる。
だが——。
誰よりも冷たいその目の奥に、誰よりも深い孤独があることを、まだ誰も知らなかった。
※※※
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