『続 お元気さんの出るお茶』

やましん(テンパー)

『続 お元気さんの出るお茶』 上


 もう、かつてあの山の中のお店にたどり着いてから、10年は経つけれど、2度とあそこに行けたことはありません。


 街から、さほどは離れていない山の中にあった、不思議なお店です。お店というよりは、ぼろぼろ『納屋』、みたいなものです。


 つまり、『隠れ里』というわけなのです。


 『隠れ里』。


 これには、様々なパターンがあるけれど、1度は行けても、2度と訪れることはできない、という共通点があるような。『竜宮城』なども、その一種かもしれません。


 イギリスにもあるらしく、コナン・ドイルさまがそのお話しを書いていました。


 また、実在した隠れ里もありましたようです。


 しかし、この『隠れ里』は、つまり、お店であります。


 『お元気さんが出るお茶』を出してくれるお店です。


 疲れはてた心と身体に、抜群の効果があります。


 だって、ぼくが、こうして生きているんだからね。


 10年まえ、ぼくは、ぼろ雑巾みたいでした。職場からは、実質的には捨てられたみたいに身を引きましたが、自決なんかはいたしませんでした。それは、『お元気さんの出るお茶』のお陰でした。


 それでも、どんな優れたお薬でもお食事でも、効能には期限があります。


 10年生き延びたとはいえ、ぼちぼち、危なくなってきていたのです。


 だから、なんとかして、また、『お元気さんの出るお茶』が、必要だよなあ☺️、と、痛感しておりました。


 あ、麻薬ではありませんから。


 けれども、人は、歳を取るのです。


 10年前の体力は、いまはありません。


 ああ、あと10年くらいは、生きていられたらいいな。


 そんなことを、ぼやっと、思いながら、回りが明るすぎてよく見えはしない、星空を眺めておりました。


 すると、空のどこから来たのかは判りませんが、1枚のチラシが降ってきたのでした。



  『お元気さんの出るお茶、ご招待状』



      と、書いてありました。




          🧻


















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