第6話 青い哀しみ

 憶えているかい?


 二人が初めて逢った日のことを


 おふくろ同志が知り合いで


 お母さんに連れられて


 僕の病室に入って来たお前は


 手術後で苦悶に歪む僕の顔を見て


 挨拶も碌にせずに


 いきなり吹き出したっけな


 睨みつけてやろうと思って眼を開けたら


 大きな黒い瞳と白い歯が微笑っていた


 あの時のお前の清々しさは


 白い壁の部屋よりも遥かに清浄だった



 憶えているかい?


 二年前の誕生日のことを


 詩の好きだったお前に


 僕の細やかな自作の詩集を贈ったら


 お前はとても喜んでくれたっけな


 リルケを贈った時もあれ程には


 喜んでくれなかったのに


 早速読み出したお前の長い睫の動きを見て


 僕は堪らなくお前が愛しくなった


 そっと抱いた僕の腕の中で


 お前の小さな肩が震えていた


 あの日、初めてのベーゼと共に


 お前は一つ大人になったんだったね



 お前が逝って早や半年


 華を飾る僕の


 深い悲しみ!

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