第23話 恋というもの
「え、、えっと、あっ、あたしって、ど、どういうこと?」
頭が真っ白になる。
「あたしが、駆のことを好きって言ったの!」
顔を真っ赤にしてドンっと一歩詰め寄る
(あかねが、すき?、お、おれを?)
ふらふらになりながらも脳に浮かんだ疑問を口にする。
「りょ、涼のことはどうなったんだよ、」
「涼のことはもちろん好きだよ。でも今は幼馴染として、あたしが好きなのは君なのっ!!!どんなときもあたしを助けてくれる君に恋をしてしまったんだよ」
「っっっ」
自分の足で立っている感覚がない。泥の中に引き摺り込まれているようだ。
なんとか逃れようと後退りするも背中に衝撃が走る。気付けば俺は壁際に追い込まれていた。
焦点と合わないまで茜を見る。助けを懇願するように。
しかし、茜は引かない。もう進むだけだと言わんばかりに俺に問いかける。
「ねぇ、返事を聞かせて欲しいな」
「へ、へんじ?」
「あたしは言ったよ。駆のことが好きだって。駆はどう思ってるの?あたしのこと」
俺には茜のことをどう思うかなど考えている暇がなかった。
茜が俺のことを好きだと言っている。本来は飛んで喜ぶべきシチュエーションだ。しかし、俺は恐怖という感情に埋め尽くされていた。俺はまだ怖いんだ。人を好きになるのが。
逃げなきゃ
捉えきれないほどの恐怖を前に俺はただただ子供ように怯えるだけで、とにかくこれから逃れたい。今はこのことしか頭なかった。
だから俺は茜の静止を振り切ら走り出した。
涙を溢す、茜を置いて。
◇
日光が目に差し込み目が覚める。
眠い目を擦りながら辺りを見回すと涼と瀧はまだ寝ていた。
昨日、ふらふらで部屋に戻ってきた俺を心配してくれた二人だが、俺が何も言わないのを察するとそっとしておいてくれた。二人の優しさが沁みると共に罪悪感が込み上げてくる。
俺は居た堪れない気持ちになり部屋を飛び出し、無意識的に浜辺に出かけた。
もしかしたら俺は心のどこかで願っていたのかもしれない。彼女に会うことを。なんでも知ってる彼女なら俺を助けてくれ、話を聞いてくれるのではないかと。
浜辺に着くと思惑通り彼女、麗華はそこに居た。
「おっはよ〜気持ちのいい朝だね。ってそんな訳にはいかないか」
「お前なら知ってるんだろ。昨日何があったのか」
「もちろん知ってるよ。私はなんでも知ってるからね。それにあたしは茜ちゃんと同じ部屋だよ?あんなに部屋で泣かれては私じゃなくたって分かるよ」
「茜が、、」
「ねぇ、なんで同情してるような表情をしてるの?傷つけたのは君だよ?」
その言葉がグサっと心に刺さる。
もう茜に涙を流させない。そう心に誓い始まった物語を自分から終わらせる羽目になってしまった。
「君を責めてる訳じゃないんだよ。君がそうなった理由も分かってるからね。でも君は選ばなければならない。逃げることも一つの選択肢だけど、本当にそれが君のしたい選択なのかな?」
女神のように囁きかける麗華に俺の心はすでに掌握されている。
彼女には絶対に敵わない。
そのことを瞬時に理解する。
「すぐに答えを出せっているわけじゃないんだ。
答えを待って貰うことも、一つの選択だよ。私が思うに今の君に必要なものは恋、というものを知ることだと思うよ。時間をかけたって構わない。君が恐れているのはそれが得体の知れないものだからってのもあるんじゃないかな?それが自分にとってどんなものかを理解できたとき、本当の答えが出せると、私は思うよ」
喉に引っ掛かっていた骨が溶けていったようだ。
瞬間、朝日と海が目に入る。こんな絶景が目の前にあるなんて気が付いていなかった。
「欲しい言葉は貰えたかな?」
そう微笑む彼女に
「ありがとう」
心の底からそう答えると、気付けば自然と歩み出していた。
今俺がすべきことは一つだ。
もう一度、茜と話をしに行こう。
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