「匂いを嗅ぐ名探偵は、高校生活に巻き込まれる! 臭気判定士の能力で転校生の秘密を嗅ぎ取る青春ラブコメ」
常陸之介寛浩◆本能寺から始める信長との天
プロローグ:中学時代の難事件
――あの日、僕はまだ「名探偵」ではなかった。まだ、あの殺人事件を解決することになるとは夢にも思っていなかった。
僕の名前は白井健太(しらい けんた)。高校二年生、臭気判定士としての資格を持つ男子だ。普通の中学生だった頃、僕は自分の嗅覚が異常に鋭いことに気づいていた。でも、これが将来の仕事になるなんて、思ってもいなかった。
中学二年の秋。学校で起きた事件。それが、僕の人生を変えた。
その事件は、突然起こった――
突然の変化
夜、学校の周辺で異臭が漂い始めた。それは最初、誰も気にしなかった。ただの腐敗臭か、ゴミの臭いだろうと誰もが思っていた。しかし、次第にその臭いは強くなり、学校全体に広がり始めた。
「何かおかしいぞ、あの匂い……」
放課後、教室に残っていた僕は、異変に気づいた。いつもなら無視して帰るところだが、今日は違った。僕の嗅覚がそれを許さなかった。
―この匂い、ただの腐敗臭じゃない。違う。
僕はすぐに感じ取った。それは、普通の「腐敗」や「生ゴミ」の匂いではない。もっと……生々しく、異常な何かを示す匂いだった。すぐにその臭いの発生源を突き止めるため、僕は校舎の中を歩き回り始めた。
そして、教室の一角に差し掛かったとき、僕の鼻は鋭く反応した。そこには……どうしても嗅ぎたくない匂いが漂っていた。
それは、死の匂いだった。
事件の発覚
僕は急いで職員室に向かった。そして、担任の先生に伝えた。
「先生、あの臭いは……ただの腐敗じゃないです。何か、異常事態が起きている」
先生は最初、僕の言葉を半信半疑で聞いていたが、僕が詳しく説明するうちに、その場の雰囲気が変わった。
その後、学校内が騒然となり、警察が駆けつけた。僕が感じ取った通り、その臭いは校内の一角で発生していた。調べてみると、物置の中に遺体が発見された。
それは、予想外の事態だった。なんと、その物置で、教師が命を落としていたのだ。
「殺人事件……」
警察が到着したとき、すでに遺体は発見されていた。その教師は、学校の名物教師で、どこか頼りにされていた人物だった。しかし、僕の鼻は確信を持っていた――それは、単なる事故ではない、誰かが意図的に仕掛けたものだ。
嗅覚が示す証拠
僕の嗅覚が頼りになったのは、その「匂い」だった。警察が捜査を進める中で、僕は再び匂いに注目した。
まず、死体の周囲に漂うのは、血液の匂い。その上に、次第に「特異な香り」が漂っていた。普通の人では気づかないだろう。しかし、僕の鼻は違った。
「これだ」
僕はすぐにその匂いがどこから来ているのかを突き止めた。それは、死体の近くにあった液体――それが、犯行に使われた薬品だと気づいたのだ。
この薬品は、家庭用の掃除用液体の成分を基にしたもので、無害に見えるが、適切に処理しなければ異常を引き起こすことを知っていた。死体のそばに置かれたそれは、犯人が意図的に使った証拠だ。
僕の解決策
事件が発覚してから数日後、警察は最終的に犯人を特定した。犯人は、その教師と深い関わりのある同僚の教師だった。彼は教師間での対立から、復讐のために犯行に及んだのだ。
僕は、あの時感じた匂いがすべての手がかりだったと確信している。そのおかげで、事件は無事解決した。
「ありがとう、白井君」
警察の担当者が僕に礼を言ったとき、僕は少し照れながらも、心の中で満足感を感じていた。自分の嗅覚を活かして、難事件を解決した――それが、僕の「名探偵」としての第一歩だった。
事件後の変化
その後、学校は一時的に落ち着きを取り戻した。しかし、僕はこの事件をきっかけに、少しずつ「名探偵」としての名声を得ていった。クラスメートや先生たちは、僕の嗅覚を頼りに、ちょっとした問題を解決するために声をかけてきた。
そして、僕の名前は、少しずつ学校中で知られることとなった。「匂いの名探偵」として。
それから数ヶ月後、僕は転校生の石橋紗奈(いしばし さな)と出会うことになる――あの時のような事件が、また僕を巻き込んでいくとは思いもしなかった。
――匂いを手がかりにして、青春の謎が解き明かされていくことになるなんて、その時はまだ知らなかった。
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