第6話 ブレスレットを… (*流血シーンあり)
「エルー!!荷造りはおわってるの?」
エルがこの家を離れる日が刻々とせまってきた。
「ん。」
「本当?忘れ物ない?王都は遠いんだよー?忘れ物したって届けにいけないんだよ」
あの日からエルはさらに難しい本を読みあさっている。
この日も朝から本から目を離さない。
それはいい
でも場所がおかしい
「エル!勉強もいいけど…」
「んー」
なぜか私の部屋なのだ
「なんでここなのよ!」
ある日突然私の部屋に入ってきて、一緒に勉強するようになったのだ。
まるで今までそうしていたかのように。
あまりにも自然に
エルが本で顔をかくし、肩を小さく震わす。
「なによ、なんで笑ってるのよ!ー!」
「アリーシャがさ、寂しそうにするからだろ」
「な、な、そんなことないわよ」
たしかに寂しい、けど、態度には出してないはず!なんでばれたのよ!
「ここに来た頃は、兄弟ができたみたいで嬉しいっていってたもんな。アリーシャは一人っ子だし」
それは、エルがここに馴染めるように言ったつもりだった。
エルの顔が近づく
「アリーシャ」
近い近い!
「あのさ」
耳元でエルが囁く
「気晴らしいかない?」
「へ?」
アリーシャの敷地は広い。
馬小屋も何戸もあるし、離れの屋敷もある、山にもかこまれてるし、小高い丘もある。
丘には訪ねてきた人や、働く人が休めるように、小さなベンチが置いてあった。
季節はいつのまにか初夏になっていた。
エルと出会ったときは
木々達が紅く染まる季節だったのに
今では青々とした葉が芽吹き
光をうけてキラキラとしていた。
ベンチに座るエルの横顔をちらりとのぞく。
青白かった肌が健康的にやけている。
風に揺れた前髪から、覗く深紅の瞳も、力強く前を向いていた。
(綺麗…)
私があまりにも見ていたから、気付かれたのだろう。
「そんなに見られる恥ずかしいんだけど」
自分の顔が熱くなるのが分かった。
「いや!元気になってよかったなぁ!思っただけだから!」
「アリーシャのおかげだよ。」
「え?」
「………ありがとう…」
照れたように横を向く、エルの頬も赤く染まる
「はー…やっと言えた…」
「アリーシャ」
エルが私の手をとり
手首になにか巻く
そこには赤い石がついたブレスレットだった。
「エル?どうしたの、これ………」
「町で本を買うついでに買った。……今はこんなのでごめん。」
「王都に行って、またいいのがあれば贈るから…」
「いらなかったら捨てても……」
エルが私のために選んでくれたことがうれしくて、思い切り抱きつく。
「捨てるわけないでしょ!ずっとつける!!ずっと!!」
上から安堵した声が聞こえる。
「エル!エルの家はここなんだから、いつでも帰ってきてくれていいからね!」
「アリーシャ…」
私の肩を抱く
その力が強くなった気がする。
「エルは私の…」
その時だった。
黒く大きな人影がエルを蹴り上げる。
「っ?!!!!!」
吹き飛び、地面に強く打ち付けられた頭からは
赤い血が流れていた。
人影は酷く嗤う
「探したぜ、お前らのせいで俺はよぉ!」
イライラした様子で何度もエルを蹴る
「いやぁああ!!!!」
エルを守るように覆い被さる。
男はそんな私の背中も容赦なく蹴る
「汚ぇ奴隷だったガキがっ!!いい身分だな!!」
打ち所がわるかったのだろうか、血は止まらず、ドクドクと赤く染めていく。
流れでる血を止めてあげたくて両手で押さえる
この男は、かつてエルを奴隷の様に扱ってた管理人だ。
解雇して、追い出したはずだったのに、
遠くの地にいったはずなのに、
処分が甘かった事に酷く後悔する
「どけよっ!!!小娘!!」
ニタリと笑い、私の胸ぐらを掴み、投げ飛ばす!
「っ!!」
背中と胸に痛みが走る
男の手に刃渡り30センチほどのナイフが
握られていた。
声にならない悲鳴が、自分の喉からもれる
「っ!?」
「こいつのせいで!俺の人生はめちゃくちゃだ!お前だけ!のうのうと!!」
「っやめて!!」
愚かな男だ。
エルは何もしていない!
全部自分が招いた結果のくせに。
それなのに
何もできない自分に腹が立つ
ナイフの先がエルの腕に沈む
血が溢れる
「いやぁぁぁ!!」
──エルが何をしたっていうんだろう…
男に投げ飛ばされた体が軋む
それよりも胸の方が苦しかった
息ができない
──やっと幸せになれるはずだったのに
「やめて…」
『アリーシャのおかげだよ』
胸が熱い……
喉の奥がちりちりとする……
熱い…
────エル!!嫌だ!!
「嫌だ!エル!死んじゃ!だめだよ!!嫌だあぁあぁぁあ!」
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