王国騎士団の闘神 ~無能と呼ばれた少年は己の拳で最強の騎士になる~
キレ猫
第1章 駆け出しの騎士達
第1話 無能のジェイ
「大‥‥だ、ジェイ。お‥‥‥とお母‥‥が守‥‥」
両親はそう言い残し戦場と化した街へ駆ける。
(や‥いや‥‥やだ‥‥いかないで‥‥)そこで記憶は途切れ‥‥‥
「うぅ... はぁっ!!」ジェイは声を上げベッドから起き上がった。またあの夢だ。15年も前だというのに‥‥
「大丈夫?随分うなされていたけど‥‥」
少しして隣から少女の心配する声がした。
「ああ‥‥大丈夫だよネオ。心配かけた。」
少女もとい、ネオにそう答えた。
彼女は僕の幼馴染にあたる。幼馴染より兄弟の方が近いか?
15年前に両親が死んだことから彼女の家に引き取られた。僕と彼女の母が幼馴染同士という縁もあってのことだろう。
「そう‥‥今日は私たちの入団式なんだから準備して早く行こう!」とネオは僕を急かして部屋を出ていく。
「そんなに急がんでも入団式は逃げんだろうよ‥‥」と、ツッコミを入れてみたが多分聞いてない。うん‥‥さっさと準備しよ。
数分後、僕とネオは家を出て式の会場へと向かっていた。僕達は今日、エウリュール王国騎士団に入団する。その名の通り、このエウリュール王国の騎士団であり、国内の治安維持や防衛、要人の警護等を行う。僕の両親もその隊員として‥‥‥などと考えていると、ネオがのんびり訪ねてきた。
「ジェイ~、さっきはどうしたん?あんなに声荒げちゃって。」
「あぁ、またあの夢見たんだ。」
「あっ、ごめん‥‥。もしかしてジェイのお父さん達、空の上からみてるのかな?」と少し申し訳なさそうに聞き返してくる。
「そうかもな。もしそうじゃなくても2人に恥じない、そんな騎士になるよ。」
そう答えるとネオは微笑み、ジェイならきっとなれるよ。とつぶやく。
「ところでネオ。これから大事な大事な式典があるわけだが‥‥‥寝るなよ?」
「うっせ!」
せめて否定しろよ‥‥
そうこう言っているうちに会場に到着した。場内には既に今年入隊する隊員がぞろぞろと集まっている。ここにいるのは第1、第6、第7隊に配属される者だ。ちなみに僕達は第6隊に所属することになる。
式はつつがなく終わり、僕達は第6隊本拠地へと向かう。ちなみに第1、6、7隊は王都に本拠地をもつ。第6は主に王都東部を担当し、第7が西部、そして第1隊は王家直属の部隊となっている。数分歩き、第6隊本拠地に到着した。建物の前では、1人の女性が出迎えてくれていた。
「やあジェイ、ネオ。久しぶりだね!」
と、女性の方から声をかけられた。
「お久しぶりです。ジーナさん。」
「これからよろしくお願いします。」
そして僕、ネオの順に続く。彼女の名はジーナ ・フロスト、第6隊の副隊長を務めている。彼女とは学園時代からの浅からぬ縁がある。そのため、僕達が第6隊に配属されたのも彼女の推薦によるものだろう。
すると、後ろから屈強な男がこちらにやって来た。そしてその男は副隊長に一礼してから話しかける。
「副長、お疲れ様です。ところで、そちらの2人は新人でしょうか?」
「ああ、そうだ。紹介しておこう。今日からうちに配属となるジェイとネオだ。そんでこの厳つい男がダンだ。君達の先輩だな。」
「ダン・ヴァルゴだ。よろしくな。」
「「よろしくお願いします。」」
挨拶をし終えたところでダンがあることを僕達に訪ねてきた。
「ところで、お前達はどのような能力を使うのだ?」と。
「どのような能力」というのは『剣術系能力』又は『攻撃魔法能力』のことを指しているのだろう。ネオは主に植物魔法を用いる戦闘スタイルを好む。だから彼女はそのように答えた。だが僕は、
「剣術系能力、攻撃魔法能力を扱うことが出来ません。」と、正直に答える。
すると案の定、ダンの顔から笑みが消える。
「攻撃系能力全般が使えないだと?お前、ここが何処だか分かっているのか?ここはエウリュール王国騎士団だ。そして俺達は誇り高き王国の騎士だっ!俺達が存在する意味は何だ?治安維持、国の防衛、他にも挙げればあるが国を、国民を守るためだ。そしてそのために俺達は第一線で戦うのだ!!それなのに、能力が使えない奴に何が出来る?断言する、お前はここにいるべき人間じゃない!!」やはり攻撃系能力が無いからここでは不適切だと思われてしまっている。
「おいおい、随分な物言いだな。ジェイを見込んで第6に引き抜いたのは私なんだが?」
ジーナ副隊長は僕を擁護するが、
「いくら副長が見る目があると言っても、今回は容認出来ません。」
と、ダンは僕のことを否定する。
「ダンさん。貴方の言っていることは最もなことです。僕もその事は分かっていてここに居る。でも第6に入るにあたって貴方に認めてもらう必要がある‥‥。」
今、すべきことはただ一つ。
「では、決闘を申し込みます!!」
「ああ、いいぞ。ただし!負けたら分かっているな?」
決闘が始まると知り、訓練場に隊員達がぞろぞろ集まってきている。彼らの話を聞く限り、無謀な勝負を挑む新入りといったところか。でも‥‥私はジェイが勝つと思っている。
「ルールは先に一発入れた方が勝ちでいいかな?」審判は副隊長がするらしい。
「そんじゃ、開始~」
開始の合図と共にダンは大剣を構える。
「では、遠慮なくやらせてもらうぞ。一撃で決める!!大岩切り!!」
言うと同時にダンが大剣を大きく縦に振りかざす。これを躱し、次の攻撃に備える。
「まだまだ!こんなもんで終わらんよ!!」
今度は立て続けにラッシュ攻撃を仕掛けてきた。(さっきの一撃で地面が砕け瓦礫が散乱している!もろに喰らったら致命傷になるな‥‥。そしてこの間髪入れぬ連撃。だが、当たらなければ問題ない!)
「なかなかの身体能力だな。お前の動きを見れば分かる。だが、避けているだけじゃあ俺には勝てんぞ?」
ダンの言う通りだ。しかし、互いに剣での勝負だけでは力の差で負けるだろう。隙を見つけてこちらの流れにしなくては‥‥
「お前は今、策を練っているのだろう。それは俺も同じことだ。そして大岩切りを躱した時、お前の敗北は決定した!」
ダンの声と共にそこら中に散らばっていた瓦礫が一斉に動き出す。そしてその瓦礫が、全方位からジェイを目掛けて飛んでいく!
「大岩切りはこのための準備!これが俺の固有魔法能力、
「これは勝負あったな。
観客席ではダンの勝利を確信する声が聞こえてくる。そしてその中から、
「あれ?ダンと戦ってる奴、もしかして『無能のジェイ』じゃないか?」という声が聞こえた。『無能のジェイ』これはジェイが学園時代に呼ばれていた名だ。私はあまり好きではないが‥‥。すると副隊長が
「ルーカス、君はなぜ彼が無能と呼ばれているか知っているか?」と訪ねた。
名を呼ばれた隊員、ルーカスは少し考えて
「さあ‥‥能力が無いからじゃないですか?」
と、首を傾げながら答える。
「ん~、半分正解かな~。」
「半分正解?どういうことですか?」
「こればっかりは私に聞くよりネオに聞いた方がいいんじゃないかな~?」
と、私に話題を振ってくる。
「私なんかより長い時間彼と過ごしているんだ。当然、詳しいよな?」まあ、確かに?
「それに、君はまだジェイが勝つと思っている。違うかい?」
「えっ、何で分かったんですか!?」
「おいっ、ここからダンが負けるだと!?一体どういうことなんだ!」
「まあ見てよ、あれを。」
そう副隊長が言う先を見ると、
「なっ、何だ!何が起きている!?何故瓦礫が奴に当たらない!?」明らかに動揺しているダンの姿があった。地面に散らばった瓦礫は全方位からジェイに向かって飛んでゆくものの、一定の距離に到達すると一気に減速して地面に落ちてゆく。
「何故だ、俺は
徐々にダンの声色から自信が消えゆく。
「なあ、ネオと言ったな。教えてくれ。今あの2人の間で何が起こっているんだ!?」
場内で何が起きているか。誰もが理解できてない中、ネオが声を上げる。
「あれこそがジェイの能力なんです。そして無能と呼ばれる理由。ダン先輩の
だが、隊員達の中で更なる疑問が生じる。
「ダンの能力を打ち消した!?しかし、さっきジェイは能力が使えないって‥‥」
「ルーカスさん、ジェイは攻撃系の能力が使えないと言ったんです。だから攻撃能力じゃない魔封じは使えるんですよ。」
この事実に、ジェイと戦っていたダンは今起きた現象に納得する。
「魔封じ。なるほど、それがお前の能力か。だが、
そう言い放ちダンは再び剣を構える。
「魔法が使えないなら、剣で戦えばいいだけのこと!先程までの戦いで剣の技量は俺の方が上だと見た!!」
ジェイに向かって突撃し、凪払う‥‥が、
(消えた!?どこだ‥‥どこに行った?さっきまでそこにいた。俺の剣を避けられない距離にいた。だが当たった感触は無い‥‥)
ダンが考えていると、背後にジェイが現れダンの腹部に一撃を入れる。(こいつ、あの距離から凪払いを避けて後ろに回り込んだだと!?なんと言う身体能力とパワー!それにこの動き、武術なのか?俺は武術を扱う者に負け‥‥‥)
それと同時にダンの絶叫が訓練場に響き、その場に倒れ込む。
「勝負ありだね。ジェイの勝ちだ。」
ジーナの判定により、決闘はジェイの勝利で終了した。
初めにジェイが『無能』と呼ばれたのは何時だっただろうか。そして、その意味合いが変わってきたのも何時頃かも覚えていない。だが、ある頃からジェイの強さを知った者が畏れや敬意を表して言い出したのだ。『能力を無にする。』故に『無能のジェイ』と。
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