第十四話 緑色の蛍光色を放つ湖面
白フワちゃんと一緒に何時間湖面を眺め続けていただろうか、陽は傾き湖面はオレンジ色に輝くようになってきた。
日中の青々とした湖面も綺麗だったが、斜陽となり湖面に暗闇の部分が広がり始める中、反射し続けている部分のオレンジ色は混じり気がなく彩度が高い。
美しい!これこそ自然美ってやつだな!
湖面に反射したオレンジ色の光は陽が沈むとともに次第に絞られ、一直線になり始める。
うーん、これがなんちゃら蛇ってことなのかな?
白フワちゃんの様子を伺うと、全く満足している様子はなかったのでこれではないのだろう。
ただ白フワちゃんもオレンジ色の光を浴びて、いつもと違った可愛さになっていた。
ふふふ、オレンジ色のピンポン球になっちゃってるよ。
可愛すぎる姿についイタズラしたくなってしまい、手のひらを卓球のラケットに見立てて『チョン』としてみる。
「何よ!」と言いながら不機嫌そうな目を向けてきた。
「白フワちゃん、もう帰ろーよー。暗くなっちゃったよー。これじゃ、なんちゃら蛇出てきても見えないよー」
「なんちゃら蛇じゃなくて、ラブシ・オヤウよ。何回言ったら覚えるのよ」
あはは、ごめんなさい、なんかカタカナの並びって覚えるの苦手で。
白フワちゃんにイタズラしている間にも陽はどんどん沈んでいき、辺りは暗闇に覆われ始めてしまった。
当てが外れてしまったのだろうか?指示通りの場所で、なんちゃら蛇をずっと待っていたが一向に現れる気配はなくもう完全に辺りは暗闇に覆われてしまった。
あ〜ぁ、暗くなっちゃったよ。せっかく洞爺湖が一望できる温泉宿を予約したというのに、これでは何も見えないだろうな。
「来たわよ。なんか物凄いエネルギーを感じる!」
え!
僕が落胆し肩を落とした瞬間だった、白フワちゃんは興奮したかのようにピョンピョンと跳ね回り出す。
え?
どこ?
見上げた先は真っ暗闇、もはや目の前の湖面の動きすらも分からないほどの暗闇が広がっていた。
何も見えないんですけど?白フワちゃんがおかしなこと言ってるなーっと思ったその時だった。
何やら湖面がぼんやりと光り始めた……。
??
何が始まったの?
湖の中に蛍でもいるかのようにぼんやり光り始める。ぼんやりとした光はどんどん緑色が濃くなってきて、水の流れにのるように揺れ動き始めた。
青いサンショウウオの時のように、空中を漂うように出てくるのかと思っていたのだが違ってたようだ。
水中を泳ぐ光る蛇?
泳いでいるというか湖の中で海藻が揺れ動いているような光景に見えた。
夜の海で波の動きに合わせ神秘的な色を放つ夜光虫のように、暗闇に覆われた湖からぼんやりとした緑色の蛍光色が放たれていた。
この状態でも十分神秘的な光景だったのだが、さらに変化は続いた。
緑色の蛍光色の中に黄色のような、オレンジのような、ゴールドのような色が混ざり始める。
まるでタマムシの背中でも見ているような輝きを放ち、それが湖の中で揺れ動いている。
発光するクラゲが漂っている光景のようにも見えるが、規模が半端ない。見渡す限りの湖面一面が緑の蛍光色になっているのだから、現実世界の光景とは思えないような景色だった。
「綺麗ね〜、あれなんで光ってるの?」
「なんで光ってるんですかね〜?人知を越えた神秘現象ですから……答えなんて知る由もないです……」
??
声が聞こえたので思わず答えてしまったが……。
え?
今の声ってどこから聞こえたの?
白フワちゃんと目を合わせる。白フワちゃんも声の主がわからないようでキョトンとしていた。
「綺麗な緑色ね〜、私こんな綺麗な緑色見たの初めてかも」
え〜〜〜っ!
声の主が分かった瞬間、白フワちゃんと一緒にのけぞってビックリしてしまった。あまりの想定外の出来事に、湖に飛び込んでしまいそうになるくらいの衝撃だった。
「真紅のエゾカンゾウちゃん、あなた喋れたの??」
「うん、そうみたい、私も今、初めて知った」
「……これは…どういうことだ??」
「私は元人間よ。そっちの白いふわふわしてる奴より喋っててもおかしくないでしょ」
まあ確かにそうだけど。
「え?急に喋れるようになったの?」
「うん、あの緑のやつ見てから」
うーん、多分これは……神秘的な自然エネルギーを吸収して成長したってことなのかな?
白フワちゃんも自然エネルギーで成長しているんだから、真紅のエゾカンゾウちゃんも成長したとしてもおかしくない…よね?
うーん、よし、これは深く考えないことにしよう。
「あの〜、真紅のエゾカンゾウちゃん、勝手に連れてきちゃったんですけど、大丈夫でした?」
「あなたの思いは伝わってるから大丈夫よ。でも真紅のエゾカンゾウっていうのやめてもらえます?」
え!
どゆこと?
「えっとじゃあ、なんて呼べば?」
「チャレンカでいいわよ」
「うーん、なんかそれじゃー、親密感がないなー」
だからと言ってチャちゃんはおかしいよね?チャレちゃん?うーん…
「じゃあレンちゃんって呼ぶね」
「レンちゃん?なんであいだ取るのよ?」
そこが一番しっくりくるからです。
◇ ◆
早朝、僕は一人で洞爺湖を一望できる温泉で湯あみを楽しんでいた。
「疲れた体に沁みるな〜」
「沁みてばっかじゃん!」
うん?なんかツッコミが入ったような気がするが、気にしないでおこう。
洞爺湖温泉は神経痛、冷え性などに良く、皮膚の表面を柔らかくする効果もあり、お肌の汚れや皮脂などを洗い流してくれると言われていて美肌効果が強いのだとか。
「うん、イケメンになった気がする!」
「なってないです!」
うん?今度は別の声でツッコミが入ったぞ?
「大絶景のパノラマ〜、でも、最近ずっと湖ばかり見ている気がする。次は森林でも見に行こうかな〜」
「なら釧路湿原がいいぞ」
「釧路湿原?」
「釧路湿原には煌めく尾をはためかせて飛翔するタンチョウヅルがいるんだ!それを見に行くぞ。それを見ればきっと私は大きく成長するはずだ」
え?
タンチョウヅルが尾をはためかせて飛ぶ?そんなことあるわけないじゃん。それは逃げ出したクジャクとかを見間違っただけなのでは?
「コラーっ!お前また、現実的な発想して、行かないように仕向けようとしてるだろーっ!」
げ〜っ!またバレてる〜!
「でも、釧路湿原って自然環境維持のため立ち入り禁止にしてるのではないかと……」
バチンっ!
「痛ッ!」
「いい加減にしろーっ!」
ひぇ〜っ!怒った〜!
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