第2話 冷めても甘い
「……それで、どうしてここに?」
ミルクティーのストローをくるくる回しながら、僕が聞く。
彼はちょっと間を置いて、肩をすくめた。
「なんとなく。
たまたま通りがかったら、今日で閉店って書いてあったから」
「“なんとなく”で入るかね、ここに?」
「君がいるとは思ってなかったよ、もちろん」
「でしょ」
言いながら、僕はちょっとだけ笑ってしまう。
あの頃の彼なら、こう言い訳するだろうなって思ってた通りのセリフ。
「閉店するって、寂しい?」
「どうだろ」
僕はミルクティーを吸ってみる。冷たい。
「この店で、君と会った記憶がなければ、別になんとも思わなかったかも」
「……言うね」
「事実だし」
「でも、来てたじゃん。
君、落ち込んでるとき、絶対ここで甘いの飲んでた」
「は?」
「気づいてないと思ってた?
僕、窓際から見てたよ」
その一言に、
手の中のカップがほんの少しだけ重くなる。
「……だったら、声くらいかけてくれればよかったのに」
「だって、君、僕のこと、見てなかったじゃん」
僕の視線が、彼の目をとらえた。
今さら、そんなこと言われたって――
「……今さら言われたって」
「だから、今言ったんだよ」
不意に、ミルクティーの甘さが口の中に広がる。
冷めても甘いって、たぶん、こういうことなんだと思った。
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