鋼鉄の黙示録 第0章:クライマックス・プレリュード

第 0話 ─ 鋼鉄の咆哮と希望の閃光 ─


 西暦20XX+α年。かつて繁栄を極めた都市、TOKYOは見る影もなかった。


 空には異次元の裂け目が禍々しいオーロラのように揺らめき、地上には未来からの侵略者――機械帝国『秦』の鋼鉄こうてつの軍勢と、古代の亡霊を宿したかのような兵馬俑へいばようが大地を埋め尽くしている。


 人類最後の砦と化した新宿地下の旧施設「ヘスティアの炉」。


 そこで、そして東京各地で、絶望的な戦いの火蓋が切って落とされようとしていた。



【黄金の戦士、守護の拳 - 大江戸嵐 -】


「うおおおおおおっ!」


 黄金色のオーラを全身にまとい、大江戸嵐は地を蹴った。


 目の前には、統率された動きで迫りくる蒼き槍兵の軍団。


 呂布との死闘を経て、そしてこの「ヘスティアの炉」の共鳴を受けて、彼の内に眠る軍神アレスの力は変質を遂げていた。


 荒ぶる破壊衝動は影を潜め、背後の仲間たち、避難民を守るという強い意志が、オーラを黄金色に輝かせている。


『嵐くん、右翼三体、エネルギーランス同時突き!軸線上に民間人!』


 通信機から届く、恋人・夜野蝶子の冷静な声。

 精神リンクはなくとも、二人の絆は揺るがない。


「させっかよ!」


 嵐は突進の軌道を変え、槍衾やりぶすまの側面へと回り込む。


 迫る三本の蒼き閃光。

 以前の彼なら力で弾き飛ばしていただろう。だが、今は違う。


 黄金のオーラがまるで盾のように展開し、ランスのエネルギーを吸収、そして…受け流す!


 最小限の動きで攻撃をいなし、同時に空いた胴体へと浸透勁しんとうけいのような拳を叩き込む。


 内部機構を破壊され、蒼き兵士は火花を散らして沈黙した。


「チッ、やはりアレスの因子持ちか…!だが、貴様の力、ヘスティアの炉ごといただくぞ!」


 指揮官機が、両肩のキャノン砲に憎悪のエネルギーを集束させる。


 広範囲殲滅攻撃。仲間たちを巻き込むわけにはいかない!


「お前がもらうのは、俺の拳だ!」


 嵐は黄金のオーラを最大限に高め、迫りくる破壊の光へと真正面から立ち向かう!




【霊長類最強、母なる剣 - 潮来由利子 -】


 月明かりの下、潮来道場の庭園は死線と化していた。

 五体の武人型サイボーグ。

 それぞれが異なる武技と未来兵器を駆使し、潮来由利子を包囲する。


 彼女の道着は裂け、頬には血が伝う。

 だが、その双眸の光は一切衰えていない。


「老いたか、女剣士。もはやこれまで」


 大剣使いがあざけるように言い放った、その瞬間。

 由利子の周囲の空気が凍りついた。


「……今……老いた、と……言ったかしら?」


 地獄の底から響くような静かな声。

 次の瞬間、彼女の全身から凄まじい気……いや、怒りのオーラが噴き出した!


「私は!永遠の!18歳だぁーーーーっ!!」


 絶叫と共に、由利子の二刀流が神速を超えた動きで舞う。


 木刀が空気を切り裂き、サイボーグたちの連携を粉々に砕き、鋼鉄の装甲に深々と衝撃を与えていく。


『な、なんだこの女は!?動きが違いすぎる!』


『エネルギーパターン異常!理解不能!』


 混乱する敵の隙を突き、由利子の一撃がリーダー格の動力コアを貫いた。


 崩れ落ちる巨体。残る四体も、怒りの女神(自称18歳)の前に為す術もなく、次々と地に伏していく。


「ふぅ……」


 月下に佇む由利子。その強さは、まさに「霊長類最強」。


 だが、彼女の目は既に、ラボで奮闘する娘たちへと向けられていた。




【天才科学者、お騒がせ参上! - 潮来由利凛 -】


「いっけぇぇぇ!超・電脳神風アタックMk.II発射じゃー!」


 地下ラボでは、潮来由利凛が奇声を発しながらコンソールを乱打していた。


 オモイカネの遺したデータを元に開発した「八咫烏ヤタガラスデコイ」で敵ネットワークを攪乱かくらんしつつ、敵のカウンターハッキングと激しい攻防を繰り広げている。


「ちょ、由利凛ちゃん!その攻撃パターン、さっき迎撃されたばかりですわ!」


 モニター越しの姉・天音の悲鳴。


「うるさいのじゃ!失敗は成功の母!ならば、次は『ど根性お団子ミサイル・ファイナル』で…!」


「だからネーミング!それにミサイルなんて搭載してませんわ!」


 由利凛の奇抜な発想とハッキング技術は敵を翻弄するが、しばしば暴走し、味方(主に天音)の胃を痛める。


 しかし、その混乱の中から、彼女は確かに敵の重要情報を掴みつつあった。


「むむ?箱根の巧兄ちゃん、ピンチじゃん!

よーし、こっそり移動司令車両のブースターに、わらわ特製の『すっとびロケット燃料・メロンソーダ味』を遠隔注入してやるのじゃ!えい!」


「由利凛ちゃん、やめなさーーーい!」


 今日も今日とて、潮来ラボは(色んな意味で)賑やかだった。




【苦悩する創造主、繋がる希望 - 大江戸巧&ジャンヌ -】


 箱根の森。意識を取り戻した大江戸巧は、朦朧もうろうとする頭で戦況を分析していた。


 目の前では、明日菜が虹色の盾でサイレント・ストーカー(趙高)と激しく打ち合っている。


「シンフォニーは…まだ不完全だ…!だが、力の『調和』…!」


 巧はヘパイストスの知識を振り絞り、明日菜、ジャンヌ、そして自身の力を繋ぐための指示を飛ばす。


 創造の力、守護の力、癒やしの力、そして英里香の混沌の力。


 それらがジャンヌの祈りを介して共鳴し、再び虹色のエネルギーフィールドを生み出す。


「効いている…!」


 ストーカーが後退するのを見て、巧は確信する。

 だが、敵は去ったわけではない。影のように監視し、次の一手を窺っている。


「新宿へ…ヘスティアの炉へ行くんだ…!あそこが、鍵だ…!」


 巧はジャンヌに支えられながら立ち上がり、未来への希望を繋ぐために、最後の聖域を目指す決意を固めた。



【迫る影、新たな戦いの予感】


 それぞれの場所で、神々の力を宿す者たちが死闘を繰り広げている。


 嵐は守るための力に目覚め、由利子は母としての強さを見せ、由利凛は奇策で敵を翻弄し、巧と明日菜たちは希望の理論を紡ぎ始めた。


 だが、戦況は依然として厳しい。


 サイレント・ストーカーは執拗しつように巧を追い、潮来道場には更なる刺客の気配が迫る。


 そして、新宿地下「ヘスティアの炉」にも、あの蒼き軍団を操る冷徹な指揮官、項羽の影が静かに近づいていた。


 更に、嵐との激闘げきとうで傷つき、プライドを砕かれた呂布が、復讐の牙を研いでいないはずがない。


「フン…面白い。役者はそろいつつあるな。ヘスティアの炉…オリンポス・シンフォニー…神々の力…全て、我が覇道はどうのために手中に収めてくれるわ」


 次元の狭間で、項羽は冷たく微笑んだ。


 人類の、そして神々の運命を賭けた、本当のクライマックスは、まだ始まったばかりなのかもしれない。


 託された光は、絶望の闇を打ち破ることができるのか?



 鋼鉄の黙示録 ── 侵略都市TOKYO ──


 Coming Soon...?

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