鮮烈でスタイリッシュなバイオレンスが印象的な一編。薄汚れた裏路地を鮮やかなスポットライトに照らされた舞台に一変させる手付きの鮮やかさ。演目は死の舞踏──美の神ならぬ、戦の神に捧げられる血まみれのバレエ。華麗にして凄絶無惨の舞踏/武闘の一幕の描写はリアルで、致命的な打撃のひとつひとつが目に浮かぶようです。どうしようもなく美にあこがれてしまう主人公を死地へと誘う不敵なダンサーは、ファム・ファタールならぬオム・ファタールというべきか。全編にわたってクールとしかいいようがありません。お見事。