第46話 戦争の終結

 マリアは平野を風の如く駆け抜け、国境付近までやって来た。


 そして国境付近に展開していたエルガー王国の兵士達を前回の戦のように次々と倒していく。


 マリアが近づいた事で国境を越えて応戦してきた兵士達がメイスによって宙を舞い、エルガーの国土へと戻されていく。


 そんな中、鎧の色が違う騎士団が新たに現れた。


「おかわり大歓迎でしてよ!」


 マリアは攻戦的な笑みを浮かべると、その騎士団に向けて目の前の兵士を打ち飛ばした。


 しかし新しく現れた騎士団はこれまでの兵士や騎士と違って、弾丸のように飛んできた鎧を着た兵士を盾を使ってガードした。


「かあ、痛え! とんでもねえお嬢様だな!」


「ガハハハ! エンリエットの娘、相手にとって不足なし! お前ら——」


 騎士団長と思わしきガタイのいい人物が支持を飛ばす中、先に居た兵士達を全滅させた後、遠距離からの攻撃をやめて騎士団の方へ向かって走り出す。


「ブチかましますわよ!」


 先ほどの騎士の弾丸は防がれてしまったが、マリアが振り抜いたメイスの一撃は騎士の盾を砕いて鎧を凹ませた。


 メイスの一撃を受けた騎士が気を失って倒れるのを尻目に、マリアは返し手で次の騎士に向けて次の一撃を繰り出している。


 メイスが向かう先に居る騎士は、呆気に取られながら盾を構える余裕もない。


 しかし、マリアのメイスと騎士の間に、影が割って入った。


 そして、ガチンと大きな音をたててマリアのメイスを受け止める。


「あら?」


「ふぅ、確かに重いが所詮は女。遊びはこれまでにしてもらおうか」


 マリアの一撃を受け止めたのはエルガー王国王都直属の騎士団長バルバンであった。


 バルバンは不敵に笑みを浮かべた後、力強くメイスを押し返す。


 マリアは一旦距離をあけると、メイスを肩に担いでバルバンの方を見る。


「今までの方々とは違いますのね」


「当然だ! 俺は十騎士の1人、バルバン様だぞ。しかし、戦場にそんな格好でくるとは、あの男はどんな教育をしたのやら」


 バルバンはそう言ってドレス姿のマリアを舐め回すように見る。


「くくく、あの男が壊れたお人形になった娘を見たらどう思うだろうな? 怒り狂う最中に殺してやろう」


「団長、姫様からの命令は大丈夫なのですか?」


「構わん! 綺麗な体で連れて来いとは言われていない。ボロ雑巾でも連れていけば命令に逆らった事にはならん」


「なるほど、まあ、戦場ですからね」


 バルバンの理屈を聞いた騎士がマリアを見て舌なめずりをしながら笑みを浮かべる。


 騎士達がそんな会話をする中、マリアはメイスを見つめて軽く素振りをしていた。


「このくらいですわね」


 素振りを繰り返したマリアは1人そう呟いた。


 マリアはこれまで人に向かってメイスを振るう時は鎧が凹もうとも死なないように加減してきた。そのため、ダンジョンのように頭に一撃で終わらせるような戦い方を戦場ではしていない。


「それでは参りますわよ、覚悟しやがってくださいませ」


 先ほど防がれた感覚から力加減を調節した後、メイスを肩に担ぎ直したマリアはそう言って微笑んだ。


「そんなに相手して欲しいか? エンリエットの娘はアバズレだなあ」


「エルガーの騎士はマナーがなってませんのね、その汚いお口、塞いでやりますわ!」


 マリアが喋り終わると、バルバンの視界からマリアが消えた。


「なに⁉︎」


 バルバンが気づいた時には既にマリアのメイスはバルバンに振るわれていた。


「少し早くなったところで女の力など効かん!」


 バルバンが先ほどと同じように塞ごうと盾を構えた。


 しかし、マリアのメイスは先ほどとは威力が違う。


 盾が砕けて尚勢いが落ちぬままバルバンの腹を殴打する。


 そして鎧をも砕き、バルバンの体から嫌な音を鳴らした後、バルバンの巨大は宙を舞って地面を凹ませた。


「あら? 力加減を間違えました? ロックタイタンくらいなら大丈夫かと思いましたのに」


 地面を転がるバルバンを見て、部下の騎士達は呆気に取られて言葉を失った。


「馬鹿な……バルバン団長が……」


「い、一斉にかかるぞ! もういい! アイツを殺せ!」


 残りの騎士達が武器を構え、一斉にマリアへと飛びかかった。


「まとめて相手してやりますわ」


 マリアが好戦的な笑みを浮かべたその時、マリアと騎士達との間に大きな爆発が起こった。


「マリア! 無事ね!」


「全軍突撃ぃいい!」


 マリアを守るようにセニカとロゼニアが立ち、軍を率いたエンリエット元伯爵が号令を上げた。


「お母様、お姉様、それに、お父様⁉︎」


「このお転婆娘が、まさか十騎士のバルバンを倒すなんてなぁ。後は私達に任せなさい、この戦を終わらせてくる」


 エンリエット元伯爵は優しい笑顔でマリアの頭を撫でると、兜を被り直し、軍を率いてエルガー王国へ攻め込んで行く。


「セニカ、マリアを頼んだわ」


 セニカにマリアを任せ、ロゼニアも魔法師団を率いて夫と共にエルガー王国へと向かって行く。


 その背中を見送った後、マリアはメイスをしまった。


「ふぅ、怖かったですわ」


「どの口が言ってんの!」


 マリアが一息つくと、セニカがそう言ってマリアにチョップをした。


「お姉様痛いですわ」


 両手で額を押さえるマリアを見て、セニカは苦笑する。


「この前勝手なことしないってお母様に怒られたところでしょう? 後は任せましょう。お父様とお母様が終わらせてくてるわ」


「はい、お姉様」


 その後、エンリエット元伯爵夫妻率いる軍によって脱獄したハインツやカタリナ、それに手を貸した貴族は捕えられた。


 その後、エルガー王国からはこの戦はカタリナが勝手にやった事という書状が届く事となる。


 そして詫びとして、エルガーの領土と引き換えに、もう一度停戦協定が結ばれる事になったのであった。

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