第23話 今日もパパはパパなのである
ダークドラゴン大量出現の騒動から一週間後。
俺は朝から寝坊した。
でも大丈夫、今日は休暇だ。
昨日まで騒動の事後処理で残業続きだったこともあり、アイリーンからも「今日はゆっくり休んでくださいね」なんて言われている。だからいいのだ。
事後処理以外にも王都襲撃を未然に阻止した俺の騎士団は勲章を授与された。陛下暗殺未遂事件の真犯人を捕縛したことでニコルの冤罪も晴れ、陛下からも個人的な感謝の品をいただいた。
『これどうぞ、ニコル
有名菓子店の限定ケーキだ。
陛下は俺のツボをわかっている。
というわけで褒章と雑務が入り混じった多忙な一週間だったのだ。
「おはよ……」
俺が居間に降りたのは昼前だった。
甘い焼き菓子の匂いがただよっている。アイリーンがお菓子を焼いているようだ。
「あなた、おはようございます。よく休めましたか?」
「おかげさまで。最近寝不足気味だったからな、すっきりした」
「それはよかったです。ではこれ、味見してみてください」
そう言ってテーブルに置かれたのは焼き立てのクッキーだ。
俺は一枚取っていただく。
「うん、うまい!」
起き抜けに甘さがしみる。紅茶との相性もばっちりだ。
俺が二枚目のクッキーに手を伸ばすと、ちょうどオデットとシャロットも居間にやってきた。
「パパ、おはよー!」
「パパ、おはようございます」
二人はそう挨拶しながらも目ざとく焼き立てクッキーに気付く。
「あっ、パパばっかりずるいー! ママ、シャロットも食べていい?」
「私もいただきたいです!」
「もちろんいいわよ。でも食べすぎないでね、みんなの分がなくなるから」
「みんな?」
みんなとは、どういうことだ?
不思議に思って聞くと、アイリーンが「うふふ」と嬉しそうに微笑む。
「今日はね、昼からオデットとシャロットのお友だちが遊びにくるのよ」
「そうなのか? オデット、シャロット」
「はい、お友だちというか……同僚です」
「そうだよ〜。同僚で同期!」
「んん?」
それって俺の部下ってことじゃないのか?
驚いて振り向くと、オデットは照れくさそうにはにかんで、シャロットは瞳をキラキラさせていた。
「ナタリアとミランシャが遊びにきてくれることになったんです」
「そう、一緒に特訓するの。たのしみ~」
「そうかっ。そうか、それは楽しみだな!」
そうかそうかと俺はバカみたいに頷いてしまう。
だって嬉しいんだ! そうか、そうか、そうか!!
あの騒動の後、ナタリアとミランシャはオデットとシャロットの友だちになったようだった。衝突することもあったが、そのぶんだけ一気に和解と理解がすすんだのだろう。
あの切羽詰まった状態で謎の自己紹介が始まったときはどうしようかと思ったが、悪くない方向に作用したようだ。
パパ、うれしい!!
鼻歌でもうたいだしそうな気分で三枚目の味見をする。
アイリーンのクッキーはうまい! うれしさ倍増だ!
「シャロット、あなたの部屋のお掃除をしましょう。部屋にも入ってもらうんだから」
「ええ〜、オデットの部屋でいいよ〜」
「もしかしたらシャロットの部屋にも入ってもらうことになるかもしれないでしょ?」
「そうだけど~」
シャロットは渋々ながらも納得する。
どうやら特訓が終わったら部屋で遊ぶようだ。アイリーンの手作りクッキーを食べながらきっといろんな話題で盛り上がるのだろう。
「それじゃあ私とシャロットは部屋のお掃除に行ってきます」
「ママ、シャロットのクッキー残しといてね」
「はいはい、いってらっしゃい」
掃除に行く娘たちをアイリーンが苦笑して見送った。
アイリーンは俺の隣に腰かけると、「ふふふ」といたずらっぽく笑う。
「なんだ」
「いいえ、あなたが嬉しそうだなって」
俺はハッとして口元を手で
ゆるんでたか? それはそれで恥ずかしい。
でも嬉しいのは俺だけじゃないはずだ。
「……お前こそ。なにニヤニヤしてるんだ」
「え、ニヤニヤでした?」
アイリーンが慌てて両手で頬をおさえた。
うかがうように俺をじっと見つめるアイリーン。
近い距離で目があって、どちらかともなく笑いだす。
「アハハハハッ、悪くないぞ。かわいいかわいい」
「ふふふ。もうっ、人をからかって」
アイリーンが頬を赤らめながらも嬉しそうに目を細めた。
この穏やかな時間は俺にとって日常だ。
でもなにより尊い時間だ。
この尊い時間が当たり前であり続けるため、今日もパパはパパなのである。
終わり
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殲滅騎士団団長の俺、国王にすら恐れられてるけど家族溺愛してます。 蛮野晩 @bannoban
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