第九章 フェイト登場

マドリーンの理由

プルドー・ベイ城の裏庭で、十字架にはりつけられた二人を見たオーウェンは、思わず驚愕した。

「アガーテ!」と、オーウェンが叫ぶ。

「オーウェン・・・」と、アガーテが、雨に濡れた顔で、小さく見えるオーウェンの姿を見つける。

(この女についていけば、陛下とアガーテの居場所に連れて行ってもらえる、と思っていたが、どうやらその読みは当たったようだ)と、オーウェンは思った。

「雨が上がり次第、あなたの目の前で、二人に火を放つわ!!それが、憎きガーレフ皇国の第4子・フランチェスカ皇女だった、アガーテ・ヴァン・セルヴァへの復讐よ!!」と、マドリーンが高笑いする。

「気でも狂ったのか、マドリーン!!!貴様がアガーテを恨む理由に、何があるというのだ!正気を取り戻せ、マドリーン!!」と、オーウェン。

「理由ならあるわ」と、マドリーン。

「当時の皇国の王族が国を捨てて逃げたせいで、隣国のリマノーラから敵兵がなだれ込み、私は敵兵からレイプされ、望まない子を授かった。その子も、飢えがもとで3歳で亡くなったわ!!全部皇国の王族のワガママのせいよ!!そんな私を救ってくださったのが、フェイト様よ!彼が、私に、王族に復讐する機会をくださったの!特に、王族の中でも、第4子の、フランチェスカ王女が、何やら恋人と身投げして死んだ、と聞いたけど、あきれたわ!!国民を差し置いて、何してるのかしら、ってね!!」と、マドリーンが狂気に満ちた目で言う。

「貴様、フェイトからそう吹き込まれたのか!アガーテは最期まで国を見捨てなかった!アガーテの兄上殿も、最後まで国のために戦って果てた、と聞く。そのことを聞いていないのか」と、アガーテから打ち明け話を聞いていたオーウェン。

「じゃあ炎のユニコーンはどうなのよ??説明しなさい!!」

「その前に、陛下とアガーテを放せ!!」と、オーウェンが剣に手をかける。

「マドリーン!!」と、アガーテが思わず十字架から声を出す。

「このガーディアンを殺して、そのあと、陛下とアガーテを火刑に処すわ!!雨が上がり次第、ね!運がいいわね、アガーテ・ヴァン・セルヴァ!!」と、マドリーンがアガーテに向かって叫ぶ。

「!?マドリーン、何を話しているのじゃ??マドリーン、一体なにが・・・・・」

「アガーテ、どうやら、マドリーンが、私たちを裏切っていたようです」と、母・ミラナ女王がアガーテに囁く。

「は、母上!」と、アガーテ。

「貴様は」と言って、オーウェンが、いつの間にか治っている肩の傷をものともせず、剣を引き抜く。

「俺がこの手で殺す!列王!!」と、オーウェン。人と神の間の存在であるガーディアンには、自然治癒力も存在する。

「おもしろい!!こい、ガーディアン!!」と、マドリーンが、シャイン・ソード・・・ではなく、降魔剣を出す。


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