第33話 整理しよう

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(千尋さん、私の話、聞いてください)←レイ


(けけけけけっ)←定宗


「あの……私、置いてけぼりなのですが」←?


(けけけけけっ)←定宗


(千尋さん!)←レイ


「そのまま、死ね」←こんなこと言うのは麗菜しかいない


(けけけけけけっ)←定宗


(千尋さん、ここはひとつ冷静になって私の話を……)←レイ


(けけけけけっ)←定宗


「千尋の恥ずかしい写真をバラまくぞ」←やっぱり麗菜だ


(千尋さん、いい加減に私の話を聞いてください!)←レイ


(けけけけけっ)←レイ……あ、違う。定宗


「やかましいわっ! 同時にしゃべるなっ!」←俺


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 会話を整理した。それを元にあたりを見渡す。やっぱり麗菜がここにいる。麗菜は麻梨亜を脅していたハゲオヤジの首に、犬の首輪のようなものを取り付け、そこから伸びた鎖の端を持ちながらニヤリと笑っている。しかし、なぜ校内にハゲオヤジを入れる?


 じゃあ、「?」の言葉を放ったのは一体誰なんだ? 周りにいる人物たちを指さしながら、一人一人確認してゆく。


 麻梨亜……ハゲオヤジ……麗菜……黒髪の美少女……定宗……レイ……俺……


(ん? 黒髪の美少女?)


 指していた指を戻してゆく。そしてふくれっ面をしている黒髪の美少女の前で指が止まった。


「今回のお話の冒頭に出てきてからずっとほったらかしだったんですけど……」


 不機嫌な口調で彼女が言った。それは俺のせいではない。それは作者に言ってくれと心の中でグチをこぼす。


「神崎弥生。古くから続く陰陽師の家系の娘だ」


 麗菜が持っていた鎖を振り回す。鎖の先にいるハゲオヤジの顔面が、金網に押しつけられてひしゃげる。不細工な顔が余計に不細工になった。


「陰陽師って……あの陰陽師? 彼女、ロザリオ持ってるぞ? 陰陽師って、なんかこう、もっと日本的な感じがするものなんじゃないのか?」


「細かいことは気にするな。彼女のおかげで定宗を解放することができた。そのおかげで彼女がコイツに変なことをされずに済んだのではないのか?」


 麗菜が木の陰からひょっこりする麻梨亜へと視線を向ける。


「解放することができたってことは、あなたには定宗の姿が見えているの?」


 俺は麗菜の横にいる黒髪の美少女に尋ねる。


「ええもちろん。あなたの頭の上に浮かんでいるレイさんも、そしてあなたの首を絞めているお婆さんの姿もバッチリ見えています」


「えっ? 首を絞めているお婆さん? えっ、そんなお婆さんがいるのか? そ、そう言えば何だか呼吸が苦しい……」


「嘘です」


「嘘かよっ! もうどいつもこいつも……それよりも、どうして神崎さんが私たちにピンチが迫っていることが分かったの?」


「占いです」


「占いって…やっぱり君は陰陽師だったのね? 陰陽師は占いで政治にも関わっていたとかいないとか、ウィキペディアに書いてあるのを見たことがあるわ。やっぱり本当だったのね? だって危機一髪のところで助けに来てくれたんだもの。やっぱり陰陽師の占いって当たるのね!」


「いえ…この件に関しては今日のめ〇まし占いを参考に…」


「め〇まし占いかよっ!」


「ちなみに千尋さんの誕生日である獅子座は…今日は12位でした。ちなみに、今日は麻酔薬に注意! だそうです」


「ははは、麻酔薬ってそんな身近にあるわけ無いじゃん…って、おいっ!」


 気がつくと麗菜が地面で伸びている。さっきまで握っていた鎖がいつの間にか消えていた。


「へへへ、その占いは当たってるよ。お嬢ちゃん…下手な真似をすると、麻梨亜ちゃんがヒドい目に遭っちゃうから気をつけなよ」


 いつの間にか麻梨亜の横にいるハゲ親父の手には、白いハンカチが握られている。きっとあれには麻酔薬が仕込まれていたのだろ。あれを嗅がされて麗菜はこんな酷いことに…」


(千尋さん…麗菜さんの手を踏みながら解説するのはやめて下さい…)


「やめて! 麻梨亜を離しなさい!」


 麻梨亜が隠れている木に向かって一気に距離を縮める。ハゲ親父の胸ぐらを掴んで投げ飛ばそうと手を伸ばした時だった。


「ネ〇ュラチェーン!!!」


 ハゲ親父が突然叫んだと同時に、麗菜から奪った鎖が俺に向かって飛んできた。


「ぐっ! な、なにっ!!」


 飛んできた鎖が俺の体に掛かった瞬間、一気に俺を締め付ける。気づくと俺は麻梨亜が隠れていた木に鎖で拘束されてしまったのだった。

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