第26話 麻梨亜の秘密

「嘘だ! 嘘だ嘘だ嘘だ嘘だーーーー!」


 部屋に戻ると思わず叫んでしまった。あの可憐な学級委員長の麻梨亜がおっさんの前で〇っぱいを見せていたなんて絶対に信じたくなかった。


「嘘だと思ったら自分で調べてみればよかろう」


 部屋の隅で、レイが点てたお茶を飲みながら、定宗がひとごとのような感じで言った。


「結構なお手前で……」

 

 茶碗を元に戻す。


「お粗末さまでした……」


 二人は向かい合ったままお互い頭を下げた。


「おいおい、悠長にお茶を飲んでいる場合じゃないだろう。どうやって麻梨亜のことを調べるんだよう。俺の経験上、夜にこの寮を抜け出すのは至難のワザだぜ」


 先日、理事長室に行く時に、トメさんに止められたことが頭をよぎる。


「じゃあここから抜けて外に出ればいいんじゃないですか?」


 レイが閉められたままの窓を通り抜け、外から話し掛けてくる。


「俺、人間だし。窓をすり抜けられないし、ここ二階だし……」


 俺の答えにレイは、「あっ」っという表情をしたあと、窓をすり抜けこちらへと戻ってきた。


「でも麻梨亜はどうやって寮を抜け出ているんだろう。定宗の言い方だと、寮を抜け出したのは一度や二度じゃなさそうだし」


「それこそ調べてみたら良かろう。外に出るわけではないのだから、造作もないことであろう……ぁああっ……そこはヤバいでござる」


 部屋の隅でレイが何かをし、定宗が身悶える。定宗は下半身を露出したままだ。


「おいおい、何やってんだよ人の部屋で。パンツはけよ!」


 レイが俺の話を無視して作業を続ける。


「結構なお手前で……」


 放心状態で定宗が言った。


「お粗末な○○○でした……」


 レイは丸めたティッシュを二人の間に置いた。


 レイに事実を突きつけられた定宗はポカンと口を開けて固まった。


 キーンコーンカーンコーン


 女学院の門が開く時間を知らせるチャイムが鳴った。俺は学校に行く用意をすると、鞄を持って部屋の扉を開いた。


「とにかく、今日の夜から麻梨亜の様子を探ってみよう。とりあえず学校に行ってくるから」


 幽霊二人を部屋に残し、俺は女子寮のすぐ横にある女学院へ向かって駆けだした。



 授業中も麻梨亜のことが気になって仕方がなかった。どの授業に対しても真面目に取り組む麻梨亜。一生懸命にノートをとっている姿からは、中年男性に〇っぱいを晒しているというシーンがとてもではないが想像できない。じっと彼女を見ていると、俺の視線を感じたのかこちらを振り返った。目が合った瞬間、麻梨亜はニコッと可愛い笑みを俺に見せてくれた。


(嘘だっ! こんなに可愛い子がオッサンの前で〇っぱいを晒すなんてっ!)


「綾辻さん……保健室に行く?」


 気づくと俺は、頭を抱えながら激しく首を振っていた。


「い、いえ……大丈夫です」


 担任の春日由里絵が俺を心配して声を掛けてきた。俺は彼女の申し出を丁寧に断った。


 国語の授業も上の空。俺は麻梨亜の方を見ながら、よからぬ想像をして悶々としていた。麻梨亜はオッサンに対してどういう理由があって〇っぱいを晒していたのだろうか……。


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「ねえおじさま。私の〇っぱい、綺麗?」


「はぁはぁ……とっても……綺麗だよ……はぁはぁ」


「本当? 嬉しい」


「ちょ、ちょっとだけ……はぁはぁ……触っても……はぁはぁ……いいかな?」


「う~ん……ちょっとだけよ」


「う、うん。ちょ、ちょっとだけ……はぁはぁ……」


「いやん。舐めちゃいやっ」


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「ぬおおおおおおおおおおっ!」


 勝手に想像が膨らみ、自爆した。


「きゃあああっ!」


 俺の声に驚き、クラスメートが一斉にこちらを見た。


「あ、綾辻さん……やっぱり保健室に行った方が……」


 再び由里絵が声を掛けてくる。これ以上奇行を繰り返せば友達を無くしてしまう。俺は由里絵の申し出を受け入れることにした。教室を出てゆく俺の姿を心配そうな顔で見る麻梨亜。本当にこの子が……と思うと、胸のあたりがモヤモヤしてきた。俺は教室を出ると保健室へと向かった。

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