第11話


「寝れない……」


(普通に寝れない……村に行って、検証をいろいろ頑張ったがまだ昼だ。日暮れに起きれるのかの心配もあってか、さらに眠れない)

(……ところで、こうして横になって目をつぶっている状態の魔力回復量はどのくらいなのだろう……眠ってる判定なのか、起きてる判定なのか……今で目を閉じてから20分ぐらいだ……ちょっと実験してみるか)


実験のため1度起き上がり、時計を取り出して、リングの魔道具を起動する。


MP 16/110

(回復量が多い!!普通に寝ている判定だった!)

(安静にしていることが大切なのか、目を閉じてることが必須なのかは、後で実験しよう……今は、魔力の回復が最優先だ)


実験せずに答えが得られたので、再度、横になり目を閉じる。


(眠れない……暇だ……他にもできることがないか考えるか……)

(魔道具の魔力庫としての運用は、手札を増やそうと今すぐ最大魔力を増やす方法として思いついたんだ。我ながら天晴れだ。んー…他にも手札を増やそうと考えてたことがもう一点あったな…確か…魔法をもっと少ない魔力で放つ方法だ…)

(確かに属性効率がなければ魔法1発撃つのに魔力が100必要だ。これはさすがに多すぎる。ぼったくりだ。確か魔法陣を用いて発動する魔術は必要魔力が少ないんだったな…魔法陣は機密性が高く、なかなかお目にかかれないから魔術を運用するのは難しいだろう……)

(んー……なんかひっかかるな……魔法陣か………ん?)


「魔法陣!!」


(そうだ!魔力庫発見の衝撃のせいで忘れていた。リングの魔道具を用いれば保有魔法の魔法陣が確認できるんだった!お手本があるなら、後は魔法陣を真似して描き、魔力を流すだけで魔術として発動ができる!)


早速飛び上がり、リングの魔道具で魔法陣を確認する。とりあえず、紙にペンで書き写し、魔力を流すが上手くいかない。描き方がいけないのか、魔力の流し方が悪いのか考える。


(えーと、魔法陣ってどうやって描くんだ…? 魔法陣を描いているところどころか、使っているところすら見たことない…魔力で描く?魔力は流すものであって描くものではない)

(魔力は、体の中心から流す、回収する、中心にしまうくらいの操作しかできない……)

(んー…なにか方法はないかなー……魔法陣なー、魔法陣が用いられるのは、魔術、魔法登録、魔道具だ。そのなかで、もっともなじみ深いのは魔道具だ。じゃあ、魔法陣を用いて発動する魔道具はどうやって起動している?)


数年前聞かされた知識を追憶する。


(確か粉だ…そう…魔道具の魔法陣には魔石の粉が用いられていたはずだ。思い出した。魔石は魔力を貯める性質がある。魔石の粉で描かれた魔法陣は、魔道具に流された魔力を貯め質を変える。その質の差で魔法陣が認識され描かれたことになり、後は魔力量次第で魔術が発動する……)

(魔石必須じゃん!そんなの持ってないよ!村に行くとき魔石が売ってないか確認しよう…)


(魔術には魔法陣の知識に魔石が必須なのか、敷居が高いな。魔法使いは金があれば誰でもなれるというのに…。いや…魔術に魔石はいらないのか…要は魔法陣の通りに魔力が流れれば良いんだ。魔法陣通りに木でも金属でも削って掘り出せば、それに必要魔力を流すだけで魔術は発動する。使いたい放題だ。速射性も掘り出した物質の魔力伝導率次第で良くなるし、おまけに使用魔力は少ない。素晴らしいな)


魔術を使うために、魔法陣を掘り出せるものはないかとマジックポーチを漁る。


(紐…ふにゃふにゃ…ダメ、紙…ペラペラ…ダメ、布団…フカフカ…ダメ、魔法陣を描くのには使えないものばっかりだ。ペン…スラスラ…ダメ…ダ…メ…?ペン…ペンか…、先ほどのように、紙に魔法陣を描いても、インクの通りに魔力は流れない。紙とインクの両方に魔力が流れてしまう。空中にインクのみで魔法陣を描けたらいいのに)


良い考えが思いつかないので左の手の甲にペンでウィンドカッターの魔法陣を描く。リングから自己魔力を回収して魔法陣のインクに流す。そして、魔法をイメージするが、やはり発動しない。


(インクに魔力は流れているが、下地である自分の左手にも同じ魔力が流れているため、魔法陣として認識しないのだろう。魔力は質が均等になるように流れるため、インクの魔力と左手の魔力の質は同じになる。いくらインクに魔力を流そうが質に変化がなければ、何も描かれてないのと変わらない。黒い紙に、同じ黒いインクで書いているようなものだ。だが、下地に魔力がなければ、インクの魔力だけになり魔法陣として、機能してくれるはずだ)


次は、左手に魔力を少し流した後、インクに左手の魔力をすべて送る。すると、左手の魔力が空になったとき、インクは魔法陣として認識され、光る。


(なるほど、魔法陣と認識されると光るのか…このまま魔法陣に必要魔力を送れば魔術が発動するはずだ)


しかし、追加の魔力を左手に魔力を送ると魔法陣の光が消える。


(魔力の量と質は関係がないのだろう、インクの魔力と左手の魔力の質が再度同じになり魔法陣を認識できなくなったんだ。失敗はしたが、インクを魔法陣として認識させる方法は分かった。魔術の必要魔力は魔法の必要魔力である24よりは少ない。魔力20程度を左手からインクに流し切れば魔法陣として機能し魔術が発動するはずだ。魔術を発動するための必要魔力を知るためにも試してみよう)


リングの魔道具からMPが20/110になるように自己魔力を回収し、余った魔力は魔道具に送る。自己魔力をすべて左手に流し、そこからインクに流す。インクの魔力伝導率は普通だ。1カ所から送るなら時間はかかるが、インクは左手の甲にあるため、全体に一気に流すことができる。魔力を送り終わり、左手の魔力がなくなるまで1,2秒だ。魔法陣が認識され光ったので、ウィンドカッターをイメージする。


(ウィンドカッター)


魔術に詠唱は必要ない。

ウィンドカッターが発動し、近くの地形を削る。左手の魔法陣は光を失い、余剰魔力は、大気に霧散される。


(よし!初魔術成功だ!)

MP 0/110


魔術は発動したが、必要魔力は量れなかった。余剰魔力が魔法陣から回収できず、大気に霧散されてしまったからだ。


(魔法陣に送り込んだ魔力の内、魔術に用いられなかった魔力は、回収どころか魔法陣に残りもしなかった。魔法陣に魔力を大量に流して、魔術を連続発動することは不可能なようだ)


(んー、インクに流す魔力と下地の魔力の質を変えられれば簡単なんだけどな…質の違う2種類の魔力が必要だ。魔力の質は人それぞれだから、魔術師が2人いればいい。1人が下地に、もう1人がインクにだけ魔力を流せば魔術は発動する。魔石なんかいらない。魔力が2種類あればいいんだ。魔力が2種類…あ……)


「俺、魔力2種類持ってんじゃん!」




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