23回目の春
路地表
23回目の春
打ち砕かれたのは、23回目の春。
これで、10社目の不合格通知だ。
ここは、俺にとって、滑り止めにすらならない会社のはずだった。
……いや、そんなことは無い。それは自分でも分かっていた。こんなにも業種がバラバラの大手企業ばかり受けているから駄目なんだ。就活の軸が無く、説得力に欠けている。
きっと、俺の
それでも、俺の高いプライドが、中堅企業を受けることを許さなかった。
浪人時代から、何も変わっていない。自分を高く見積もり、空っぽの才能を過信して、もう一年勉強という道を選び、結局は3月に3次募集をしていたこの中堅以下の私大に、やっと合格出来たというのに。
「クソ会社どもが……!」
「おいおい、もう止めとけって……」
誰かにこの思いをぶつけたくて、
翔は唯一と言ってもいい程の、親友だ。……まあ、それ以前の友達も、もう既に皆いなくなってしまったが。
「あのさ、もちろんお前のことは応援してるけどさ、俺らの大学レベルでそんな大手ばっかり受けたって、やっぱり少し難しい部分はあると思うぜ。在学中に何か成し遂げたならまだしも、お前サークルも部活も入らずに、毎日の様にゲームして酒飲んでただけじゃんかよ。まあそれは、俺らも同じことだけどさ……」
「うるせえんだよ、俺は悪くねえ。あいつらの見る目がないだけだろ」
分かっている。私のこの怒り易く自分本位な性格が、周りを突き放しているのだ。
「はあ……あのさ、こういう言い方悪いんだけど、まだ最終面接もしたことないんだろ? それって、やっぱり合ってないってことなんじゃないかな。大手受けるのもいいと思うけど、並行して中堅も受けた方がさ──」
「それは嫌だ。俺は逃げない。とにかくそういう諦めたことはしたくねえ」
「いや諦めるとかじゃなくてさ、お前の実力なら中堅企業の内定くらい簡単に貰えると思うけどな」
「なに、同情? 憐れんでんの?」
「いやそうじゃなくてさ」
「はっきり言ってうざいわ、今日の翔」
真っ当なアドバイスをくれているのに、受け入れることが出来ず攻撃的な態度を取ってしまう。この邪魔なプライドが、正論を受け付けようとしない。
「……あのさ、前からそういうところあるけど、お前のその性格直した方がいいと思うぞ。俺は友達として言ってるだけだぞ」
分かってはいるが、ついカッとなってしまう。
「……お前には分かんねえよ! インターンで早々と決まって、こんなに苦労しているのに結果が何も出ない、俺の気持ちなんかよ! うるせえんだよ、何も分かっていない癖に……大したことの無い企業の癖によ!」
言ってしまった。言うべきではない言葉を、自分の感情に任せてしまった。
「あのー……他のお客様もいらっしゃいますので……」
見かねた店員が仲裁に入ってきた。恥ずかしさと自己嫌悪で、何も言えずに顔を逸らしてしまう。
「すみません、本当に申し訳ないです」
翔が代わりに謝った。悪いのは俺なのに。
「……もういいよ、俺、店出るわ」
翔は財布から5000円札を出した。
「俺はさ、お前の無鉄砲なところ、好きではあるけどさ……」
「……」
「今のお前……まるで
翔はそう言って、店を出た。その時の俺は、それでもあいつの目を見ることが出来なかった。
それっきり翔と会うことは無く、それが最後の会話となった。
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