ハダカが出たら終わる桃太郎

ちびまるフォイ

ハダカは禁止

※これは過度な露出を防ぐようリメイクされています※

※お子様も安心て見られます※


ある日、肌の一切を露出させていない

おじいさんとおばあさんが山で静かに暮らしていました。


おじいさんは山で芝刈りに。

おばあさんは川で洗濯にという話になりましたが、

べつに女性だから家事全般を任せていいというわけではなく

あくまでも力仕事が向いているのでおじいさんは芝刈りに行っています。


おばあさんが川で洗濯をしていると、

川の上流から大きな桃が流れてきました。


おばあさんは桃の所有権がないこと。

また上流に桃農家がないことを農業組合に確認し、

取っても問題がない結論を得てから桃をとりもって帰りました。


さっそく桃を割ってみると中から、なんと全裸の男の子が!!



【 規制発動 最初からやり直してください 】



おばあさんは再び川で洗濯をしていました。


なんやかんや桃を持って帰ると、

中からは下着をちゃんと着用し、肌の露出は最低限の男の子がいました。

その名は桃太郎。


おじいさんとおばあさんは、桃太郎に厳密な露出のルールを伝えました。


「いいかい桃太郎。この世界は非常に露出に過敏だ。

 ハダカ、なんて言っちゃいけないし、やっちゃいけない」


「どうして?」


「"ハダカ"が出たら、その時点でやり直しになるんだ」



【 規制発動 最初からやり直してください 】



もう一度桃太郎が生まれると、二人は念押しした。


「ね?」


「身を持って思い知りました……」


ふたりの甲斐甲斐しい上層教育により桃太郎は成長をし、

多様性を理解し、差別を許さない正義感の強い人になりました。


「おじいさん、おばあさん。僕は鬼退治にいってきます」


「ひとりで行くのかい?」


「いえ、旅の道中で仲間を連れて行こうと思います」


「それなら村のはずれに、えらい力持ちの男の子がいるらしい」


「それは心強い。ぜひ仲間に入れたいですね」


「名前はたしか金太郎……」


「あ、ダメですね。露出が高すぎる」


金太郎の前掛けだけのファッションは刺激的すぎた。

そんなのが登場しようものなら、やり直しとなってしまう。


おばあさんからきびだんごをいくつかもらうと桃太郎は旅に出た。


するとその道中。

白い犬が道の向こう側からやってきました。


「わんわん。桃太郎さん、きびだんごをくださいな」


「お、お前! その姿……」


「わん?」


「ハダカじゃないか!!」



【 規制発動 最初からやり直してください 】



再びおばあさんは川で洗濯をしていた。


「ああ……失敗したのね……」


もう洗うものすらないので、一度洗ったものをもう一度洗い始めている。

桃太郎が生まれると事情を話した。


「とにかく露出には気を付けて」


「はい。まさか犬が服を着ていないだけでNGだなんて……」


「ケモナーという界隈もあるからね」


桃太郎は意を決してふたたび冒険へと出た。

向こうからはちゃんと犬用の服を着た白い犬がやってきた。


きびだんごを与えてお供に引き入れる。

その後も、サルやキジがきびだんごをせびりに訪れる。


もちろん、どちらもちゃんと動物用の服を着ている。

露出警察もこれなら安心。


やがてついに旅も大詰めとなる。

見えてきたのは禍々しい形をした鬼ヶ島。


「わんわん。桃太郎さん。いよいよですね」


「ああ。必ず鬼を退治してやろう!」


桃太郎たちは鬼ヶ島定期船に乗って島に上陸。

一行が来ることを知っていた鬼たちは、港に集結していた。


「グハハハ。よく来たな桃太郎。

 だが生きて帰れると思うなよ!!」


その鬼たちの軍勢よりも、桃太郎は別の部分に驚いた。


「お前らの服装、パンツだけ……ハダカ同然じゃないか!!」



【 規制発動 最初からやり直してください 】



再びおじいさんとおばあさんのくだりへと戻った。


洗濯に飽きたおばあさんは山へ洗濯へ。

おじいさんは川で芝刈りに行くことにした。


桃太郎が誕生するとおじいさんもおばあさんもキレ気味で説得した。


「頼むから気をつけておくれ。いやマジで」


「僕のせいじゃないです。まさか鬼があんな姿だったなんて……」


「たとえ人間でなくても人型というだけで露出対象になる。

 これ以上時間の逆行されると本当にきつい」


「もちろん。これが最後です」


桃太郎はお供を連れて鬼ヶ島へ再び上陸。

今度は鬼も気を使って、虎柄パンツのほかに肌には全身タイツを着込んでいた。


「グハハハ! これでもう露出してないことになるぞ!」


「パンツに全身タイツて。これはこれでNGな気がするが……」


「うるせぇ! 鬼のセンスをディスるんじゃねぇーー!!」


待ち構えていた鬼たちとの死闘がはじまった。

しかし覚悟が違う。


何度も冒険をやり直してきた桃太郎と、

鬼ヶ島でダラダラ過ごしていた鬼とは戦いの練度が違う。


だが、暴力とかは絶対にいけないので

桃太郎は鬼とのディベートでもって勝負を決めた。

武器や暴力で解決するのは勝利とは言わない。


「ひいい。こんなに強いとはもう許してください」


「もちろん。反省したか?」


「反省しました。これからは改心して地元のボランティアに取り組みます」


「ようし、これくらいにしてやろう」


桃太郎は奪われていた財宝を自宅に郵送して帰路についた。

実家に戻るとおじいさんとおばあさんが待っていた。


「桃太郎や、ついにやり遂げたんだね!」


「ええ。鬼どもをこらしてめてやりましたよ。財宝は届いてますか?」


「ああ届いているよ。しかし老い先短い身。

 鬼をこらしめるだけでいいのに、財宝までとは……」


「なにを遠慮してるんですか」


桃太郎は自信満々に話した。


「これも安心の老後のためです。

 財宝はだから持ってきたんです」



そのとき。




【 規制発動 最初からやり直してください 】




規制発動。

ふたたび時空がゆがみ時間が戻されていく。


「なんでだよ!! どこに露出があったんだ!

 どこにもハダカなんでなかっただろう!?」


桃太郎の最後の苦情へ答えるように、

最後の言葉が脳裏にまた再生された。



-- 財宝 はだか ら持ってきたんです



ふたたびおじいさんとおばあさんはやり飽きた

芝刈り&洗濯ルーティンへと戻されることになった。

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