神々の時代

 ――――神々の時代。


 世界が誕生した最初の頃、この世界は2つの国に分かれていた。1つは明るく全てを照らす光の国、もう1つは暗く全てを包み込む闇の国。

 

 光の国では光に属する神たちが朝を作り、空を作り、命を誕生させた。朝日が昇り、空気が流れ、命が生まれるのは光に属する神のおかげだ。

 闇の国では闇に属する神たちが夜を作り、大地と海を作り、命を消失させた。月が昇り、植物が生え、命に寿命ができたのは闇に属する神のおかげだ。

 

 この2つの世界は上手く共存していた。

 1日中朝だけでは休むという概念が生まれず働き続け心と体が壊れてしまう。だからこそ、皆が休むための夜が必要だ。

 生命はたとえ無限の空と空気があっても大地と海が無ければそれぞれの環境に合った場所で生きることができずに廃れる。

 命に終わりがなければ世界に命が溢れやがてパンクする。死という概念が輪廻を作り新たな命を世界に産み落とすことができるのだ。

 こうして、光の国と闇の国は互いが持っていない世界の理りを分け与え共有し生きていた。光の国と闇の国が共存することで人、動物、魚類など様々な命が誕生した。

 全てが上手く回っていた。このまま世界は続いていくのだと誰もが思った。しかし、平和は突然の終わりを告げ争いが起きる。

 

 光に属する神たちは暴れまくる闇に属する神たちと対抗するべく新たな命を産んだ。


「光に属する神々の祝福はここにあり!我らの母に勝利と平和を捧げるのだ!」


 命を産み出せない闇に属する神たちはすでにこの世界で生きていた命にそれぞれ呪いをかけた。


「闇の属する神々の呪いによって我らは産まれ変わった!我らの父に栄光を!」


 魔人族が呪いをかけ、毒で殺そうとしても天使族が全ての呪いを解き毒を中和させる。

 そんな天使族を殺すのは鬼人族だ。力と防御力がない天使族に力を振るい数を減すが根絶やしに至る前でドワーフ族の守りによってそれを阻まれる。力と守りはほぼ互角。

 ならば数で押せばいいと考えた獣人族は従えた魔獣にドワーフ族を襲わせて守りの体制を崩す。

 しかし、エルフ族の後方支援によって守りの力が倍増されて崩れないことも多々あった。

 では、全てを飲み込もうと動いた竜人族は大波を呼び大地を操る。それでも光側が倒れない理由は妖精族にあった。

 嵐を呼び雷や雪を降らせ時には風を使って足場を作り仲間を守る。そして、天候を操る妖精族は自然から力を得ていた。

 そこに目をつけた魔神族が自然に呪いをかけて弱体化を狙うもその呪いを天使族が解く。

 この連鎖は戦いを均衡にする。どちらも決定的な打撃を与えることができず2つの勢力は命と世界を削りあった。


 何百年と続いた戦いで神々は疲弊ひへいし、最後の力を振り絞って互いを封印する。

 神々が封印されたことにより光に属する神と闇に属する神を信仰していたそれぞれの種族たちは一時休戦し、交わって住んでいた地を分けたことによって国境が作られる。

 光に属する神たちを信仰していた光の国は森や平地が多く自然豊かな土地に住み、闇に属する神たちを信仰していた闇の国は激しい山々や海に面した土地へと住み着いた。

 それぞれの世界は互いの存在を疎みながらも国を作り、建物を立て、食物を耕し、命を育み成長した。2つの国は王位という地位は作らず各種族から1人ずつ代表を抜選し、その4人が国のまとめ役として民たちの生活を安定させた。

 だが、いっときの休戦を得られてもまた争いが生まれ互いの命を削り疲弊し国が崩れかけては休戦し、しばらく経てばまた戦が始まる。この流れを変えられないまま時代は進み世界の誕生から長い時間が過ぎていった。

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