第10章:風と仲間と、不器用な心
第39話:高原都市アネモス
俺たちアステラルダ一行は、風使いの暗殺者シルフィを(成り行きで)仲間に加え、風光明媚な高原都市アネモスに到着した。
標高の高い場所に位置するこの街は、空気が澄み渡り、見渡す限りの草原と緩やかな丘陵が広がっている。街のあちこちには、白い風車がゆっくりと羽根を回しており、その名の通り、常に心地よい風が吹き抜けていた。拳王都の熱気とは対照的な、穏やかで美しい街だ。
「わー! 空気が美味しい! 風が気持ちいいー!」
ルルナが、高原の風を受けて気持ちよさそうに駆け回っている。
「確かに、ここは良い場所だな。鍛錬にも集中できそうだ」
カイも、新鮮な空気を吸い込み、満足げだ。
ゴルドーとゼノンは、黙々と荷物を運びながらも、その景色の美しさには感嘆している様子だった。エリアとシルフィは……相変わらず互いを牽制し合っている。やれやれ。
「ほっほっ。たまには、こういうのんびりした場所も良いもんじゃろ?」
ジン爺さんが、穏やかに微笑んでいる。
俺は、この街の雰囲気が、悪くないと感じていた。拳王都のような、常に気を張っていなければならない空気はない。吹き抜ける風が、心なしか身体の回復を早めてくれるような気もする。
俺たちは、街で一番眺めの良い丘の上に建つ、少し古風な宿屋に部屋を取った。しばらくは、ここで骨休めと鍛錬に集中するのもいいかもしれない。
俺が部屋の窓から高原の景色を眺めていると、ふと眠気を感じた。連戦の疲れがまだ残っているのだろうか。俺は、珍しく、ベッドではなく窓際の長椅子に身体を横たえ、心地よい風を感じながら、うとうとと微睡(まどろ)み始めた。穏やかな昼下がりだった。
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