第27話:集う強者、それぞれの思惑
拳聖祭の参加登録は、街の中心にある大きな闘技場――「拳王闘技場」で行われていた。会場は、参加登録をしようとする武術家たちでごった返しており、熱気に満ちていた。
俺とカイが登録手続きをしている間、他の仲間たちは、それぞれの目的で動き始めていた。
ゴルドーは、「姐さんの応援グッズを作る!」と息巻いて、どこかの店へ走り去った(やめてほしい)。
エリアは、フードを目深にかぶり、人混みに紛れて情報収集を開始したようだ。大会の有力選手や、怪しい動きをしている者がいないか探っているのだろう。
ゼノンは、俺たちの周囲を警戒し、不審者が近づかないように、その巨体と威圧感で(無言の)壁となっている。
ルルナは、様々な流派の武術家たちの動きや筋肉を観察し、「ふむふむ、興味深いデータ……」などと呟きながら、手元のメモ帳に何かを書き込んでいる。
ジン爺さんは、近くの茶屋で悠々とお茶をすすりながら、周囲の様子を観察しているようだった。
登録を終え、俺とカイは、会場に張り出された予選の組み合わせ表や、注目選手のリストなどを眺めていた。
「うおー、すげぇ数の参加者だな!」
カイが感嘆の声を上げる。その数は、数百人にものぼるようだ。予選を勝ち抜くだけでも、相当な実力が必要だろう。
注目選手のリストには、様々な異名を持つ強者たちの名前が並んでいた。
「『疾風の猫娘』シャオメイ……猫獣人の俊敏な拳法家か」
「『鋼鉄の女帝』ブリジット……鍛え上げられた肉体を持つ女性格闘家……?」
「『千変万化』のキリヒト……特殊な武器術を使うトリッキーな相手……」
「そして、前大会優勝者、『不動の拳聖』ゴウケン……」
どの選手も、一筋縄ではいかない相手ばかりだ。
俺は、リストに載っている名前と異名を、一つ一つ確認していく。
(……面白い。不足はない)
俺の口元に、自然と笑みが浮かぶ。
これだけの強者が集まるのだ。腕が鳴る、というものだ。
「へっ、面白そうな奴らばっかりじゃねえか!」
カイも、俺と同じように、闘志を燃やしているようだ。
「だが、最後に勝つのは俺だ! そして、アステラルダ、あんたも倒す!」
「……好きにしろ」
俺は、カイの言葉を軽く受け流す。
その時、エリアが俺たちの元へ戻ってきた。
「アステラルダ様、少し気になる情報が」
彼女は、声を潜めて報告してきた。
「どうやら、今回の拳聖祭には、例の『影の教団』の関係者も紛れ込んでいる可能性があります。不審な動きをしているグループがいる、と」
(……影の教団……? この武術大会に、何の目的で……?)
俺は眉をひそめる。ただの武術大会では終わらないかもしれない。
「それと……例の『聖女代理』様が、この拳聖祭を視察にいらっしゃる、という噂もあります」
エリアは付け加えた。カラスから聞いた、魂魄の水晶の処理に関わるかもしれない人物だ。
(……面倒事が、さらに増えそうだな)
俺は、大会への期待と共に、新たな警戒感を抱きながら、闘技場の喧騒を見渡した。
この拳王都で、一体何が起ころうとしているのか。
俺の戦いは、ただの腕試しでは済まないのかもしれない。
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