第35話
ルナの邪悪な淫紋と媚薬は完全に解除されていた。
それでも毎日ルナを浄化した。
邪神は浄化したと見せかけて邪悪な魔力を隠している、その可能性もあったのだ。
何よりルナは心が弱っていた。
その心を癒す必要があった。
ルナは今ではすっかり俺に心を許してくれている。
ゲームではルナのエロシーンが無い。
だからどこが弱いか分からなかった。
不意打ちに弱い事が分かって少ししてから閃いた。
『目をと閉じて祈って貰えばいい』
その後三日月のように仰け反るまで気持ちよくすると体の熱が冷めるまで何をされても弱くなることが分かった。
俺はルナに祈って貰い必ず目を閉じさせた。
そして何度も何度も言葉を投げかけ会話に意識を集中させた。
そこで不意打ちのように白き叡智なる手で気持ちよくした。
心が弱っているルナにはタッチセラピーが必要だった。
そして弱った心に考える時間を与えてはいけない。
何度も何度も言葉をかけた。
『今はただルナの弱った心を癒そう』
『これは聖なる行いだよ』
『ルナは助けてくれる何かが必要だった。それが今だ!』
『目は開けないで』
『ルナのつらい過去は夢で見た。俺はその辛さを分かるから』
ルナが白き叡智なる手の浄化を受けた後ベッドの上で震える。
「は、はあ、はあ、クエス、さま、ありがと、う、ございました」
「きゅうきゅう(どういたしまして、体力を使う浄化だけど、顔色が良くなったね)」
ルナは両手を頬に当てて顔を赤らめながら言った。
「今日も、凄く、よかった、です」
「きゅきゅう? (うん、気持ちよかった?)」
「はい、クエス様の浄化は、気持ちいいです」
「きゅきゅう(神聖で叡智なる魔法を受けて気持ちいいならかなり浄化が進んでいるね)」
「すべてクエス様のおかげです」
ドアがコンコンとノックされた。
「エリスよ。プリムラ、ルナ、クエス、今いいかしら?」
「私は大丈夫ですが……」
「きゅきゅう(僕も大丈夫)」
プリムラは無言で頷いてから言った。
「入っても問題ありません」
「失礼するわ」
エリスがベッドの横に座った。
そしてルナの手を両手で握る。
「ルナに、謝りたい事があるわ」
「え? 何も?」
「あるの、この北の辺境がこんなに悪くなったのはサクリ家のせいなの」
「サクリ家、エリスさんの父が統治していた? で合っていますか?」
「そう。私は何も出来なかったわ」
「そんな事はありません」
「え?」
「だって、エリスさんがクエス様をここに導いたのです。クエス様から聞きました。エリスさんがいなければクエス様はここに来なかったかもしれないと」
「クエス、あああ、何ていい子なの!」
エリスが俺を抱きしめる。
俺はエリスの胸元に顔を埋めてすりすりした。
エリスも傷ついていたんだ。
悪いのは全部エリスの父だ。
「きゅきゅう(帰ったら一緒にいよう)」
「帰ったら一緒にいようと言っています」
「あああ、クエス、ありがとう」
俺とエリスはしばらく抱き合った。
ルナの浄化を続けた。
代わりの領主がこの地に来ると俺達パーティー・ラムザ・ルナは王都への帰路に就く事になった。
兵士も必要な数を北の辺境に残して帰る
俺はエリスの胸元に入って出発の時を待つ。
城の前でラムザ・マイン、そして兵士と合流する。
「きゅきゅう! (ラムザ、お前痩せたままじゃないか。それに元気が無さそうだ)」
「ラムザさん、クエス様が言っています。ラムザが痩せたままです。それに元気が無さそうだと」
「僕は大丈夫、兵士のみんなが頑張っているのに僕だけ休むわけにはいかないよ」
「クエス、帰ったらマインが倒してやるよお」
「きゅきゅう(マインもボロボロだ。頑張ったな)」
「マインもボロボロです。頑張りましたねと、クエス様が言っています」
「えへへへ、やっぱりわかるかあ」
みんながほっこりとした顔をした。
「クエス、ラムザを癒したいのよね?」
「きゅきゅう(しばらく回復してやるよ)」
俺はラムザの頭に乗った。
「ラムザ・マイン・それに兵士の皆さんもお疲れ様でしたわ。帰路の道中、馬車の中で交代ではありますができうる限り休むのですわ。それでは王都に向けて出発ですわ」
俺は帰路の道中疲れたみんなを癒し続けた。
◇
王都に帰り王城に向かうとパレードが行われる。
ラッパとドラムの音が鳴り響き民が歓声を上げる。
「聖獣様あああ!」
「ラムザ様!」
「英雄が帰ってきた!」
「こっち向いて!」
王城の前ではマインの両親が出迎える。
「マイン、帰って来て良かった」
「安心したわ」
「マイン、今日はお家に帰るのですわ。マインは遠征でたくさんの活躍をしましたわ」
「そこまで言うなら、しょうがないなあ」
そうは言いつつまんざらでもないマインが家族と一緒に帰っていく。
王都も地面が雪で覆われている。
王城の前には王が立っていてその周りを近衛が囲む。
横には兵士が整列して並び、その周りを民が囲む。
ノワールを王が抱きしめた後王の斜め後ろに立った。
俺はエリスの胸元に入っていた。
ラムザ・エリス・プリムラが王の前で跪いた。
その横には両脇を女兵士に抱えられて白いローブをまとったルナが立っている。
王がみんなに聞こえるように声を張った。
「よくぞ戻った! 寒さの厳しい北からの遠征帰りだ。立つのだ!」
雪の上で膝を突くみんなを王が気遣いすぐに立ち上がらせた。
「静粛に!!」
ざわざわと騒がしかった民が静まる。
「激励の前にはっきりさせたい事がある! 邪神の生贄にされそうになったルナの処遇だ!」
ルナをどうするか。
まだ、決まっていなかったのか。
失敗すればルナは城の地下に幽閉されたまま一生を終えるかもしれない。
「何度も会議を重ねた。だが一向に意見がまとまらなかった! そこで実際に私がルナを見て判断を下す事に決まった! ルナが安全である証拠を示すのだ!」
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