第34話
【ルナ視点】
クエス様の白い触手が私の服の中に入ってくる。
「ふぉ! ふう! んんん!」
口から声が漏れてしまう。
声を、抑えられない。
「きゅきゅう(ルナ、今回は靴を脱いで、床に膝を突いて、目を瞑って、両手を組んで、女神様に祈りを捧げな浄化するから)」
私はベッドではなく床に膝をついて祈った。
「は、はいぃ」
白い触手が服の中で蠢く。
そしてその白い触手が下着の中にも入ってきて聖なる魔法で私を浄化する。
服を着ているのに、なんで下着姿の時より気持ちいいの!?
淫紋も媚薬も効果がほとんどなくなっているのに、なんで気持ちいいの!?
どうして昨日よりも、女神様に祈りを捧げている時の方が気持ちいいの!?
これが女神様の使いであるクエス様の力!
クエス様が私の肩に乗って耳元で囁く。
「きゅきゅう(ルナ、お前は人に寄り添う事の出来る優しい女の子だ)」
クエス様の優しい声を聞くと気持ちよくなる。
どうして?
私は答えを返すことが出来ず祈りの姿勢を維持できず揺れて踊るように体が反応する。
「きゅきゅう(本当はただ、誰かに助けて欲しかったんだろ?)」
クエス様の言葉で涙が溢れる。
心が満たされていく。
でも反対に体は言う事を聞かず祈り続ける事が出来ない。
口から女の声が洩れだす。
「ふう! んんんんん! んん! んんあ!」
「きゅきゅう(ルナの夢を見た事を話したと思う。ルナはたくさんの人を助けてきた。でもルナに助けて貰う人はそれが当たり前のようにしていた。そして上司や同僚はルナに仕事を押し付け続けた。周りにいたみんなはそこまで仕事をしていなかった。だから仕事をしていない人から解雇されていってルナが最後まで施設に残る。それの繰り返しだった)」
私が言って欲しかった言葉をクエス様が言ってくれる。
三日月のように欠けた私の心が満たされていく。
なのに私の体からはだらだらと汗が流れて白いローブがぐっちょりと肌に貼りつく。
こんな姿をクエス様に見られたくない。
まるで服に縛られているように感じる。
クエス様の触手にも縛られているように感た。
縛られているように感じるのに心が満たされていく。
これはまるで慈悲の抱擁!
「きゅきゅう(人はお互いに助け合うものだ。ルナ、ここにいるみんなは人を助けてくれる。ラムザも、エリスも、プリムラも、ノワールも、マインは素直じゃなけど、みんな助けてくれる。俺もルナの事を助けたい)」
私は、誰かに助けて欲しかった。
足りない何かが心に流れ込んでくる。
心が満たされていく。
そして私はいつの間にか祈りの姿勢から両腕を組んだまま前に倒れ込んだ。
まるで猫のように両ひざと両肘を床に付けていた。
私の体が言う事を聞かない。
「申し訳、ありませんんんん! 祈りの姿勢でなあああん! なくなって、ふううう!」
「きゅきゅう(祈りの姿勢は完璧じゃなくていい。心が大事だ。でもそのまま目だけは閉じて)」
「は、はいぃ!」
完璧でなくてもいい。
私はそう誰かに言って欲しかった。
心が解放されていく。
体が言う事を聞かず、額を床に付けています。
そしていつの間にか左を向いて右頬を床に付けていた。
体が言う事を聞かず痙攣してふらふらと体が揺れる。
女の声が漏れる。
「きゅきゅう(無理をしないで。心の中で祈ろう。無理な体勢をさせてしまったね。両手を解いて手の平を床に付けて、楽にして)」
心が解放されていく。
両手を床に付けてバランスを取ろうとする。
でも体が言う事を聞かずそれでもふらふらと体が揺れる。
「きゅきゅう(両脚を開いて楽な姿勢にしよう。もっと脚を開いて。楽な姿勢でいいんだ。もっと、もっと開いて楽にして」
心が解放されていく。
脚を開いて姿勢を維持しようとする。
それでも体が言う事を聞かずに揺れてしまう。
心が解放されるのを感じるほどに私の体が操られていく。
これはクエス様のお導き。
白き叡智なる手が私を導いている。
クエス様は私を導き続け、なんども優しく声をかけ続けてくださる。
「きゅきゅう(声を我慢しなくていいんだよ)」
「きゅきゅう(体が揺れてもいいんだ。ヒクヒクしてもいいんだ)」
「きゅきゅう(脚の指に力が入っているね。体の事は気にしないで心で祈ろう)」
「きゅきゅう(目だけは閉じて、心の祈りだけは目を閉じて集中しよう)」
昔妄想していた。
白馬の王子様が助けにきてくれて私を連れて行ってくれる、そんな夢。
でも今、クエス様が白馬の王子様のように感じる。
クエス様は私を導いてくれる。
邪神に心を許した私を包み込んでくれる。
女の喜びを教えてくれる。
私は満たされ、解放されてる。
◇
「は、は、はあ、はあ、はあ、はあ」
クエス様の白き叡智なる手が私から離れる。
目を開けると床は私の体液で木の床が濡れていた。
「はあ、はあ、はあ、よ、よだれをたらして、涙まで流して、申し訳、ありません」
「きゅきゅう(いいんだよ)」
私は恥ずかしくなり思わず股を閉じていた。
クエス様の白き叡智なる手が私をベッドまで運ぶ。
私は上を見てベッドに横になっていた。
「はあ、はあ、今日も、ありがとうございました。私の体の中にあった邪悪な魔力が無くなったようです」
「……きゅきゅう(……まだ、わずかに感じる)」
「そ、そんなはずは……」
私は白いローブをたくし上げようとした。
体液でローブが体に張り付き淫紋の位置までたくし上げる前に肌に張り付いて引っかかる。
急いで立ち上がろうとすると白き叡智なる手が私を制した。
「きゅきゅう(目を閉じて、急に動くのは良くないよ)」
「は、はい」
白き叡智なる手が服の中に入って来る。
「クエス、様?」
「きゅきゅう(念入りな浄化が必要だね)」
「で、ふぉ! ですが、もう、邪悪な魔力はもう、あああああ!」
「きゅきゅう(僕は邪悪な魔力を感知するプロだから、プロに任せて)」
「はああああああああああああああん!」
服の中で白き叡智なる手が蠢く。
終わったと思った所から急に浄化が始まり私は三日月のようにお尻を浮かせて仰け反った。
そして切ない犬の遠吠えのような声を部屋中に響かせていた。
◇
目を開いた瞬間、クエス様自身が満月のように優しい光を発していた。
もう、どのくらいの時間が流れたか分からない。
明るかった窓にはカーテンがかけられて、満月がカーテンに写り込む。
私は何度も三日月のように仰け反った。
少し古いベッドが私の動きでぎしぎしと音を立て続けた。
暖炉の薪がパチパチと音を鳴らす。
その柔らかい明かりが私の影を壁に映し出す。
その影は何度も三日月が昇るように踊って沈むを繰り返す。
その影は炎の揺らぎなのか、
それとも私が仰け反る動きなのか、
見分けがつかないほどに私は何度も仰け反った。
私は普段口から出さないはずの女の声を何度も部屋中に響かせた。
その声は悲しい犬の遠吠えのように聞こえる。
普段出すはずの無い声を自分の耳で聞いて自分の体が自分の物では無いように感じる。
私の汗でベッドのシーツが湿り続ける。
私の汗が振り乱れる髪を頬に、おでこに貼り付ける。
私のローブが体に張り付いてぴったりと貼りつく。
その隙間を作るように白き叡智なる手が這い回る。
クエス様は私の体を操るように導き続けてくださる。
私は三日月のように仰け反りながら、
心は満月のように満たされていた。
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