第13話 ルイの部屋、扉の向こうにふたりきり

「……じゃ、入って。片付いてないけど」


「お、おう……」


その日、放課後。

俺はルイに連れられて、初めて彼女の家へと足を踏み入れた。

アパートの二階。コンパクトな1DKの部屋。


ルイの部屋は、想像してたよりも"女の子っぽい"。

カーテンはピンク、ベッドカバーはフリルつき、机には可愛いペン立てと化粧品の小瓶。

けど、そこに並んでるフィギュアやラノベの山が、しっかりオタクの証明でもあった。


(……ルイらしいな)


「あれ、陽翔、ボーッとしてない? もしかして……緊張してる?」


「し、してるに決まってんだろ!」


「ふふっ、かわいい。……ね、ベッド、座っていいよ」


促されるままに腰を下ろすと、ベッドがふわりと沈む。

ルイも隣に座り、足を組みながら俺の方を覗き込む。


「ねぇ、さっき言ったこと……覚えてる?」


「……“全部が知りたい”ってやつか?」


「うん。私ね……好きな人のこと、触れて知りたいの」


そう言ってルイは、俺の手を取って、自分の太ももにそっと乗せた。


「……触れて。私の身体、知ってほしいの」


(や、やばい……本気だ)


指先越しに伝わる体温。すべすべした肌。

男の娘——つまり身体は男子のはずなのに、こうして触れていると、どうしようもなく女の子だ。


「ルイ……ほんとにいいのか?」


「陽翔になら……全部、見せてもいいって思えるの。……だって、ずっと好きだったもん」


その言葉を聞いた瞬間、俺の中で何かがはじけた。


「……ルイ、こっち向け」


「ん……」


俺はそっとルイの頬に触れ、ゆっくりと唇を重ねた。


一度、二度……重なるたびに、ルイの身体が震える。


「……キス、うまくなったね」


「お前が練習相手だろ」


ルイがくすっと笑って、俺の手を自分の胸元——ではなく、その下へと導く。


「ここ、触れても……大丈夫」


(……覚悟、決めるか)


手のひらに感じる膨らみ。

でも、嫌悪感なんてまったくなかった。

むしろ、愛おしいと思えた。


「……ルイ。お前が男でも女でも、関係ねぇよ」


「っ……それ、ずるい……」


ルイの目から、涙がひと粒こぼれた。


その夜——


俺たちはゆっくりと、お互いの身体を確かめあった。

手を、唇を、声を重ねて。

何度も、確かめるように。


——この気持ちは、恋だと。


そして、これが本当の“初めて”だったのだと——


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