第20話 私情警察5 ~後編~ 中東の拷問【石打ち刑】
オレは外道を大きな柱に括りつけた。手にはバットを持たせている。
キッチリ体を縛っているから満足には振ることはできないけどな。
それでも外道は眠っている。
「いつまで寝てんだ! さっさと起きろ!!」
少し離れたところからコブシ大の石をヤツに目がけて思いっきり投げつけた!!
外道は起きるといきなりギャアギャア言ってきた。
「いって、って、な、なんだここは? テメェ!なんの真似だコラ!」
「さぁ、外道の人生は9回ウラ2アウト。もう後がない!!」
「え?え? おい、それまさか…!」
オレは野球の実況のように言ってみた。
「ピッチャー!ボールを投げた!…どうなる!」
「ごふ! いてぇ!」
オレの渾身の投石が外道の胸部に命中した。オレは実況を続けた。
「ああ~!鳥嶋選手!これはデッドボールだ~!肩の調子が悪いのかぁ~?」
アフガニスタン、イラン、パキスタン…などの中東で行われる石打ち刑である。
不倫や性的暴行などの不誠実なものに使用されるそうだ。
元野球選手……不倫…。コイツにはピッタリだ。
やり方はいたってシンプルだ。
罪人の下半身を埋め、そこにみんなで石を投げるのだ。
たったそれだけの拷問である。だが、考えてみてほしい。
野球の世界ではボールが選手に当たることをデッドボール(死球)と表現する。
それは打ち所が悪いと死ぬからである。
プロ野球選手のボールは一撃必殺だろう。オレの投球はそこまでいかないが…
なに、かえって一撃必殺じゃない方がいい…。
そっちの方が外道を長く苦しめることができるからな!
オレはコブシ大の岩を力いっぱい外道に投げつける!
「ぐえ!…ぐふ!…………べぐ!」
外道の悲鳴が室内に響く。
鏡を見なくてもわかる。オレの顔は今、きっと満面の笑みだろう。
やはり……外道が苦しむ姿を見るのは最高だ!!
「フン!…フン!……おうらよっと!」
おそらくいくつか骨折している箇所があるだろう。
しかし、10球くらい投げたら、オレも腕が疲れてきた…。
「今日はこれくらいにしておくか…肩は冷やさなきゃな…」
「まっへ、どほへ…行く…!?」
「……え?オーバーワークしないように練習量をセーブしているんだよ?」
「そ、そんな」
「大丈夫だ。オレはな練習熱心なんだ。毎日やってやるからな…!」
とはいっても、すでに生みの親が見てもわからん顔面になっているが…な。
パシャ! パシャ! パシャ!
とりあえず、記念に写真を撮っておいた。
「じゃあな、仕事の合間にたまに様子を見にきてやる」
次の日にまた大きめの石をプレゼントしてやった。
2日目はなんとか持ちこたえた。さすが元アスリート。体が丈夫だ。
まぁ、ここではそれがアダになったがな…。
そして…3日目の昼すぎに外道の人生はゲームセットになった。
もはや原形をとどめていない…。
ま、性格にふさわしい見た目になったってことだ。
人間は齢よわいを重ねると、外見が性格に近づくそうだ。
(あんがい…人相学、手相なんてのも、理にかなっているのかもな…)
「今回は持った方じゃない?」
「まぁな。あ~疲れた。肩を冷やさなきゃな」
「お金はかからないけど…重たい石を用意するのはめんどうね…」
「そうだな…」
「それはそうと、マモルさん、拷問中とてもいい表情してたわ…仕事中もあれくらいの笑顔で接客すればいいのに…」
「う~ん。それは…むずかしいかもな…」
こうして今回の依頼は無事に終了した。
法律というものは加害者の人権にも配慮される。
しかし、それも度が過ぎると、被害者の気持ちを救ってやれないときがある。
そんなケースをオレは幾度となく見てきた。ウンザリするくらいに…。
その被害者のやりきれない悲痛の叫びを拾い、無念を晴らす…。
それがオレの役目なんだ…。
外道が長生きしてたら不公平だろ? だからオレが帳尻をあわせてやってんだよ。
翌日、オレは依頼者に依頼完了の知らせをおくった。
事の顛末をなるべく依頼者がキズつかないように言葉をえらんで…。
(あ~、肩がいてぇ……)
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