第4話

案内された教室のドアを開ける

俺の視界に映ったのは


至る所から笑い声が聞こえ、冗談も飛び交う。

中は思ったより騒がしかった。


俺が予想していたクラスは、もっと静かでピリピリとした空間だと思っていた。



予想を裏切られ呆然としていた俺の背中をヨルが叩く。


「ほら、早く進みなさいよ」


と小声で話しかけるヨル。

俺は

「すまん」

と一言だけ返し教卓の前に立つ。


教師らしき人が手を2回ほど叩き話し出す。

「今日から皆と一緒のSクラスになる2人だ。じゃ、2人は自己紹介してね」


と優しい声で話しかけてくる。

するとヨルが

「えーと、私の名前はヨル・アズベルト。異能は吸血鬼。これは常時発動型の異能で珍しいのよ。好きな動物は猫よ。よろしく!」


とスラスラと言葉を連ね自己紹介をしたヨル。


そんなヨルに呆気にとられていたら、肘でつつかれる。

まるで

(早くしなさいよ)

と言っているかのように。


「俺の名前は緋月廉。異能は神化。常時発動型じゃないです。体の一部を変化させる異能です。す……好きな動物は鳥です。よろしく」


と頑張って自己紹介をしてみる。


クラスの中は拍手で包まれる。

それが何故か心地よかった。


そんなこんなで、一通り終わり放課後になった。

今日は入学式、実力調査、Sクラスの中。色々あり過ぎて疲れた。

帰宅準備をしていると、廊下に詠歌がいるのが見えた。


俺は詠歌に近づき話しかける。

「なんか用か?」


「それがよ、たつ?ってやつからここに来いって言われて来たんだよ」

と詠歌は面倒くさそうな表情をしながら答える。


「へぇー大変だな」

あくまで無関心。関係の無いことだ。

ただ少し、何が起きるのか気になる自分もいる。


そうだ。隠れて見届けよう。





――――――――――――――――――



「何してんの?」

と後ろから声をかけられ驚く。

振り向くとそこにはバックを片手にたっているヨルがいた。


「なんか、詠歌がSクラスの人に呼び出しくらって待ってるらしい。それを見届けようと思ってね。だけど先生に呼び出されたからそっち行くわ」


と全容を話す。

ヨルはニヤニヤしながら


「何それ、面白そうじゃん。私だけでも見届けるわ。」


とヨルが言う。


「明日どうなったか教えて」


俺はそう言い残し職員室に言ったのだった。

―――――――――――――――――



数分後、恐らく【たつ】と思われる人物が教室に入ってきた。だが、【たつ】だけではなく

ぞろぞろと後ろから取り巻きらしき人物達がとやってくる。


すると口を開く。

「俺さ、君のこと好きなんだよね。だから俺の物になってくれない?」


とニヤニヤしながら発する。

「嫌です」

そう断りそそくさと出ていこうとしたが詠歌は囲まれてしまい出れなくなった。


【たつ】は地面に詠歌を押し倒した。


ヨルはやばいと気づき飛び出す。



「ヨル!」

と詠歌が叫んだ。一斉にこちらを向く【たつ】と取り巻きたち。

一瞬静寂になるが

ヨルが飛び出したことによって戦いの火蓋は落とされた。



私は背中に掛けておいた大鎌を取り出し攻撃を仕掛ける。


刃渡りでは無いところで相手を叩いたり突く。

私の腕を掴もうとした奴は私がコウモリに変身し、相手の手から逃れ、空中で変身を解き大鎌で叩きつける。


背中から不意打ちをしようとした相手には後ろ蹴りを食らわし吹き飛ばす。


残るは【たつ】のみ。


「よくひとりでここまでできたな。褒めてやる。だから早くどっか行け。Sクラスの俺からの命令だ」


「あら、奇遇ね。私もSクラスなのよ」


「は?」


戸惑ってる【たつ】に高速移動し、背後を取る。


「あら、Sクラスなのにこんなのにも追いつけないのね。廉は追いつくのに……」

そう言い大鎌で叩きつけたのだった。



私は【たつ】が気絶していることを確認し、呟く。

「……こんな奴のせいで制服が汚れたじゃない……ほら、大丈夫?」

と言いながら手を差し伸べるヨル。

詠歌は

「自分で立てるので大丈夫です」


と言い立ち上がりそそくさと出ていった。


「あれで隠した気になってんのかねぇ……」

そうだ。詠歌は震えていた。怖かったのだ。

そんな詠歌の背中を見ながらスマホを取りだし廉に報告したのだった。

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異能学園で無双する wkwk-0057 @wkwk-0057

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