第12話 水の都の真実

「水の試練……ですか?」


桃源は、水蓮に疑問を抱きながら問い返した。

黄金の鬼を倒すために、水の試練を乗り越える必要があるとは、一体どういうことなのだろうか。


「うん。この都にはね、古くから伝わる言い伝えがあるんだ。『水の試練を乗り越えし者、神聖な水の力を手に入れ、水の都を救うであろう』ってね」


水蓮は、 旋律的な声で、 古い言い伝えを語り始めた。

その言葉には、古い歴史と、神秘的な力が秘められているようだった。


「 神聖な水の力……ですか?」


桃源は興味を抱き、水蓮に尋ねた。


「そう。この都に眠る神聖な水の力は、黄金の鬼に対抗できる唯一の力。それを手に入れれば、お前はきっと、この都を救うことができるだろう」


水蓮の言葉に、桃源の目に強い光が宿った。

神聖な水の力。

それは、この都と、そして自身の故郷を救うための、 唯一の希望の光なのかもしれない。


「わしは、その水の試練に挑戦する!一体、どこへ行けばいい?」


桃源の強い決意に、水蓮は嬉しそうに微笑んだ。


「ありがとう、異邦人。お前なら、きっとそう言ってくれると信じていたよ。水の試練の場所はね……この都の最深部にある、『水神の神殿』だよ」


水蓮は、桃源たちを水神の神殿へと案内し始めた。

都の通りは、たくさんの住人で賑わっており、彼らは皆、桃源たちに温かい視線を送っている。

しかし、その瞳の奥には、わずかながらも不安と、希望の色が混ざり合っていた。


「この都は、本当に美しい……まるで、水の中にいるみたいだ」


猿丸は、目を輝かせて周囲の光景をキョロキョロと見回しながら呟いた。

建物は優美な曲線を描き、光を放つ特殊な素材で造られている。

通りには、 たくさんの水生植物が植えられており、都全体が、まるで巨大な水槽の中に作られたかのように、幻想的な雰囲気に包まれていた。


「ああ、この都は、水の力で守られているからね。水は、この都の生命そのもの。だから、みんな、水を大切にしているんだ」


水蓮は、誇らしげに、都の美しさを語った。

しかし、その 瞳の奥には、わずかながらも悲しみの色が滲んでいた。


「しかし、その水が、今はこの都を苦しめている……黄金の鬼の力によって……」


犬彦は、 注意深く鼻をヒクヒクさせながら、小さく唸った。

都全体に漂う、微かながらも落ち着きのない空気。

それは、犬彦の鋭敏な嗅覚を刺激していた。


やがて、一行は水神の神殿へと辿り着いた。

神殿は、都の中でも最も雄大な建物であり、まばゆい光を放つ白い柱が、 空へと伸びている。

神殿の前には、巨大な水の流れが作られており、その水面は、鏡のように静かに輝いていた。


「ここが、水神の神殿……そして、水の試練の場所……」


桃源は、緊張感を抱きながら、神殿を見上げた。

神聖な水の力が眠るという場所。

そこには、一体どんな試練が待ち受けているのだろうか。


「さあ、異邦人。お前が神聖な水の力を手に入れ、この都を救うことを、わらわは心から願っているよ」


水蓮は、優しく微笑み、桃源の背中を静かに押した。


桃源は、深く息を吸い込み、水神の神殿へと足を踏み入れた。

その瞬間、神殿全体が眩い光を放ち始め、桃源の体を包み込んだ。


「何だ……この光は……!?」


桃源は、驚きと困惑を覚えながら、光の中で目を瞑った。

そして、光が収まった時、彼の目の前に広がっていたのは、想像を絶する光景だった。


そこは、水で満たされた巨大な空間だった。

天井は遥か高く、星々が煌めく夜空のように光を放っている。

壁には、 神秘的なな壁画が描かれており、神聖な水の力が描かれているようだ。


「ここが……水神の神殿の内部……そして、水の試練の場所……」


桃源は、驚きと強い好奇心を抱きながら、目の前の光景を見渡した。

神聖な水の力を手に入れるための試練。一体、どんな困難が待ち受けているのだろうか。


しかし、桃源はまだ知らなかった。

この水神の神殿には、神聖な水の力だけでなく、この都の、そしてこの世界の、想像を絶する真実が隠されていることを。

そして、その真実を知った時、彼は重要な選択を迫られることになることを……。

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