ぷぴ25 女神のはてな

 微睡みの中で夢か現か分からない。ただ、背中をとんとん叩く手はお休みに入っている。まーまかぱーぱまでもお休みなのだろう。


『誰かいるの……?』


 気配がふっと傍に立つ。一つ、いや二つだ。


『美し過ぎるあなたは【女神】様でしょうか? 一年ぶりですね』

<私を【女神】と世の人はいいますね。【フリッグ】とも呼ばれて【愛と結婚と豊穣の女神】などど欲張りな地位にいます>


 私は赤ちゃんになってからは可愛がられてはいるが、それ以前に溺愛された記憶は掘り起こしても出てこない。家族から愛されたとか、仕事先で褒められたとか。どうしようかと思うほどに不遇だ。


『そんな虫けらみたいな生き方にお情けで転生をしてくれたのか。【愛】など遠く、先に構える【結婚】は諦めていたし、がんばっても報われない生き方は草本の自然の者達を愛していたから、小さな菜園を――』


 あ! ビジュアルが流れてきた。あれは白い団地に母といた。水回りはいつも壊れていて、お茶碗だって欠けても破壊されるまで使用していた。


<儂のことも覚えているだろうよ>

『意外な組み合わせですね。【精霊の長】様もどうして私の夢か現に忍び込まれたのでしょうか』


 謎だらけだ。【長】様は【女神】様の方へふわっと飛んでいかれた。


<【女神】と儂は家族なのだ。通常の人間とは異なるが子にも恵まれた>

『おめでとうございます。その方に【精霊の長娘】様もしくは【精霊の長息子】様をお願いしてはいかがでしょうか』


 アモン家にいたいからどうしても断りたい。


<実は君が転生したのには訳がある。ラムル湖で面会したろう。それで血筋の濃いシルヴィー・アモンは適役だと思ったのだ>


 うーん。【女神】様は凛としているが、【長】様はのんびりされているのか。


『転生された先は【女神】様が決めなさったのでしょう? 赤ちゃんを宿しておいて、面会までのんびりと会わなかったのですね』

<儂としては、その子しか考えておらなんだ。だから、確かめるとかそういうものはなかった。エルフは長生きなのを知っているな。湖底では刻など知らずに過ごせるものだ>


 変ないい訳だ。


<ミシェル・アモンに宿したのは、彼が困っているけど、きっと素敵な家庭を築いてくれるとの確信だったわ。彼は誠実に誰をも愛するだろうし、愛した女性との子として生まれることは幸福だと思いました>

『意味が分からないけど、母親は誰でもよかったというの?』


 かっついてしまった。まーまだって一生懸命だったし。


『明確な理由があったのかな』

<どうして、ミシェルに赤ちゃんの命を吹き込んだのかといえば、ミシェルには父親も母親もなく、その他親戚もいなかったという哀しい思いだったの。表情に活気もなく日々やることをこなすだけで、火災に遭った家を整理して想い出のものを求め、両親の帰りを待つべく建て直していたわ>


<【想い出の精霊】よ、【女神】の名において、姿を刻み給え――!>


 ——アモン家は僕が彼女と出会って大恋愛の末、僕が一緒に家庭を作ってほしいとお願いをした。

 彼女の優しい返事で結ばれる。

 仲良く暮らしていると赤ちゃんにも恵まれ、三人でピクニックにもいきたい。

 湖の畔で赤ちゃんは、はいはいでもあんよでも楽しく僕達と過ごすだろう。

 僕は皆の好きなパンをパンノートに記して、皆のお誕生日には食べきれないよと、美味しいよと笑顔にしたい。

 僕ががんばることで笑顔が咲くのなら。

 そのためには努力は惜しまない。

 また、この家にくることがあれば、おばあちゃんとおじいちゃんの家なんだよと孫にでも伝えたい——。


 【女神】様の映像としてぱーぱの独白が語られた。こんなぱーぱは初めて知る。


<【女神】様と儂【精霊の長】は夫婦ぞな>

『【精霊の長】様、後の話ですが二日に一度はサポートをする方向で私の【長娘】の話を調整しませんか』


 【長】様は耳をつんと触れて考えていた。訳でもあるのだろうか。


≪儂の話で我儘を聞いてくれ。【女神】と儂の間に子どもは生涯生まれない。お告げがあり分かったことだ。泥人形に動きをつけたことがあった。だが、心が入っていない。これほど哀しい思いは、もう儂だけで十分じゃ≫


『いずれ、いいことがありましょう』


 スルーした訳ではないが、身勝手な希望を持たせても仕方がない。


『私の前世はどうだったのですか。転生前のことが名前すら思い出せないのが気がかりなのです』

<その件は犯人が見つからないでいる>


 しばらくして、小さな鳥がチチチと目を覚ましだした。随分と長い微睡みだ。はてなが沢山あったものだ。 【精霊】がざわついている。


『ちょっと話を聞きたい』


 ピンクのリボンを振るった。


『ミシェル・アモンの家が火災に遭った件について、【四天王】に聞きたい』


≪はっ≫


 さっと揃った。


≪火災は過失か故意か分かっていないのですが、【サラマンダー】が知っていました≫

≪私の部下が、まだ火の扱いにも慣れていない者どもが連れ立ってやってきているのを見ました。それで【ウンディーネ】に頼んだのです≫

≪既に間に合わず、私達が集まっても火は消えませんでした。申し訳ございません……≫


 さて、私にも考えがある。

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