【書籍化決定】悪役貴族に転生した僕、家族を救うために水魔法を極めて破滅回避する!
空月そらら
第1話 悪役貴族に転生しちゃった!?
あれれ、どうなってるんだろう?
僕はゆっくりと瞳を開くと、見慣れない天井をぼんやりと見つめていた。
頭の奥がぐわんぐわんするし、身体がやけに重い。
いや……重いというか、むしろふわふわしている?
とにかく、これまで感じたことのない違和感が全身を包んでいた。
「う……うー……?」
声を出したつもりが、赤ちゃんみたいな間の抜けた音が口から漏れる。
僕は慌てて喉を鳴らすけれど、予想外に動かない舌と唇は「ばぶー」くらいしか発せられないらしい。
何これ、まさか僕……赤ちゃんになっちゃったの?
そう思いつつ周囲を見回すと、どう考えても高級品としか言いようのないカーテンや家具が目に入ってくる。
ベビーベッド……だろうか。
ふかふかのクッションに囲まれていて、肌に触れる柔らかさが、現世ではちょっと味わえないような高級感を放っている。
(ど、どうなってるんだ? 確か、ついさっきまでは大学に行く途中で……あ、そういえば交通事故に遭ったんだっけ?)
僕はぼんやりとした頭を働かせて、記憶を手繰り寄せる。
そうだ、僕は車にぶつかって、そのまま意識が消えて――。
そしたら女神様が現れて、「あなたをゲームの世界に転生させます」なんて言い出して……。
まさか本当に?
混乱を深めていると、すぐ隣で優しげな女性の声が響いた。
「リウス、寒くない? 大丈夫かしら?」
その言葉は、まるで温かい毛布にくるまれているような優しさを宿していた。
僕は彼女の方に目をやるけれど、首がうまく回らない。
どうやらこの女性が母親らしい。
ほんのりとウェーブのかかった長い金髪に、落ち着いた色合いのドレス。
端正な顔立ちに湛えられた微笑みが、僕の心をじんわりと温めてくれる。
(母……さん、なのかな? 僕は赤ちゃんになってるってことだよね。だとすると、この人は母で間違いない……はず)
そんなことを考えているうちに、さらにもうひとり、紫色の長髪をふわりと揺らす少女が顔を覗かせる。
彼女は嬉しそうに、まるで宝物でも見つけたかのような目で僕を見つめていた。
「リウス! ほっぺ触らせて!」
そう言って、紫の瞳をキラリと輝かせたかと思うと、ぷにぷにの僕のほっぺたに手を伸ばしてくる。
柔らかな指先で軽くつままれると、ちょっと恥ずかしいようなくすぐったいような、不思議な感覚が走った。
(この子は……誰? あ、でもさっき名前を呼んでた。僕のことを“リウス”って。まさか、これは……)
僕は頭の中で情報を整理する。
現世で遊んでいたRPGゲーム『王国の英雄』には、悪役貴族のリウスと、悪役令嬢のエレノアというキャラクターが存在した。
エレノアは紫の長髪に紫の瞳がトレードマークであり、徐々に性格が歪んでいって、婚約破棄、やがて破滅する運命を辿る――。
(じゃあ、まさかこの子はエレノア? だとしたら……僕は、悪役貴族の家庭に転生したってことになるよね?)
さらに周囲を見渡すと、少し離れたところには筋骨隆々で厳格そうな雰囲気を漂わせる男性が立っている。
背筋はピンと伸び、まさに“武人”という感じの威圧感。
でも、その瞳には家族を愛している人の優しさが宿っているようにも見えた。
「リウスよ、元気そうだな」
彼は豪快に笑うと、僕の小さな手をそっと握ってみせる。
どうやらこの人は父親――グスト。
横でにこやかに微笑む母はクラリス。
そして頬をぷにぷにしている少女が、姉のエレノア。
確かこの家は“辺境伯”だ。
僕は今いる領地はディナトス辺境伯領。
王都から遠く離れた、北東の自然豊かな地方であり、森、湖、雪山、温泉などがある。
そして僕はディナトス辺境伯の次男――リウス・ルードル・ディナトスという立場らしい。
(姉のエレノアは悪役令嬢で、学園編まで進むと悪役貴族の僕は破滅。でも、こんなに優しそうな家族がいるのに、そんな終わり方は嫌だよ!)
赤ちゃんな僕に何ができるかわからないけれど、どうにかして破滅を回避しなきゃいけない。
現世の記憶がある以上、無為に滅亡の道を歩むなんてまっぴらごめんだ。
僕は心の中でそう強く誓う。
「……ば、ばぶう」
僕は生まれ変わった以上、ここでなんとか運命を変えてみせる。
そんな決意をしていると、父のグストが低く落ち着いた声で言った。
「ふはは、リウスもエレノアも、元気なのが一番だな。そうだろう、クラリス?」
「ええ、もちろん。みんなで立派な貴族に育てていきたいもの。――エレノア? あんまり弟をぎゅうぎゅう揉まないでちょうだいね」
クラリス母さんがそう言うと、エレノアは名残惜しそうに僕の頬から手を離し、少し照れたように笑った。
「だってリウスがあんまりにも可愛いんだもの」
姉は可愛げのある口調でそう言いながら、紫の長髪を揺らして上機嫌に微笑む。
こんな穏やかな家族が、本当に“悪役貴族”だなんて信じられない。
でも、それがゲームの設定だというなら、なおさらここで未来を変えてやるって気持ちが強まるのだった。
―――
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