奇妙なキャンプ場⑥



お客さん冗談キツイなぁ、と。

オーナーがそう言いながら、俺にレシートを手渡す。


薪は外にありますからと言われるけど、俺は薪よりも思ってもみなかったオーナーの言葉に、思わずまた冷や汗が流れた。


でも、オーナーの言う通り、考えてみればそうだ。

最初からわかっていたはずが、汚れが目立つような白い着物を着てキャンプをするような女なんてまずいない。


それにただの撮影とはいえ、木々に囲まれたキャンプ場で着物なんてさすがに手が込んでいるんじゃないか?

いや、そもそも本当に撮影だとしたら、そういうのは事前に「撮影しても良いですか」と普通は声をかけるんじゃないだろうか。

俺やオーナーの他に人がいないのなら…もしかして本当にあの女は…だったのでは…?


俺は独りそう考えながら、とりあえず買った薪を1束手に下げる。


…別に幽霊の一体や二体、怖くもなんともないが、本当にあんなはっきりと霊を見てしまったのなら、さすがに平然とはしていられない。

今日はテントを片付けてもう帰ってしまおうかと思ったが、せっかくここまで来たのだ。

たった1晩なのだから、今日はこの場で我慢をしよう。


俺はそう思うと、ため息混じりに自身のテントへと戻って行った。



…………



俺は昔から幽霊だの宇宙人だの信じるような質ではなかったが、それは実際に自分で目にしたことがないからだ。

しかし今日、生まれて初めて見てしまったとすれば…やはり夜になってもなかなか寝付けない。


21時を回った頃には火の後始末をしてテントに戻ったが、俺はただただじっと目を瞑って時間が経つのを待っていた。



…────しかし、その時。






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