【BL】僕が誰かの“特別”になれた日

@papipupepoppo

プロローグ


彼に会うまでは、世界は僕のためにあると信じていた。


ケーキはいつでも食べられたし、勉強をサボって遊ぶのも当たり前。

大人たちは僕の言葉に笑って頷き、誰も本気で叱らなかった。


僕は王子だったから。


――でも、本当はわかっていた。


その優しさは、“期待されていない”証だってことを。


兄が完璧である限り、僕はただの予備。

しかもその予備さえ、本気で必要とされていなかった。


だから、わざとわがままを言った。

目立てば、誰かが僕を見てくれる気がした。


でも誰も本気で止めなかったのは、僕がどうでもいい存在だったから。


王子という肩書きがあっても、中身は空っぽだった。

笑われ、流され、適当に扱われる。それが、僕の世界だった。


――彼に会うまでは。

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