善良な若者が犯した奇特な殺人。事件現場で、取調室で、法廷で、あるいは他の何処かで――。様々な視点から掘り返す過去と、重層的に浮かび上がる現実。いくつもの何故? の中心に、いつも存在するタイトルの重み。淡々と進む物語でありながら、それら仕掛けが生む圧巻のリーダビリティは、他に無い読み味を与えてくれます。感情の無い微笑みの裏側にほとばしる激情。すばらしいミステリーですので、ぜひご一読ください。