ABCDEFGHIJKLMNOPQRSTUVWXYZ0123456789

新崎R

EP.1

「この世界について、幾ばくか知ることができたでしょうか?」




パチパチと揺らめく様を、パチパチと乾き目に。



雑魚寝木に坐するワタシの隣、足裏着かない少女が問いかける。




「……どうかな」




モゾりと身を預け、紡ぐ言葉を青眼が待つ。




「知らない通貨、定まっていないファッションセンス、よく分からない法律……」



「そのわりに、話す言語は同じ」




左腕が、一際温かい。



頭一つ以上違うワタシは、彼女のサファイアにどう映っているのだろう。




「君に合っていなかったら、二度目の転生をしていただろうね」




「大したことは、していません」




はにかむ表情は、ほんのり赤。



ちょっとした社交辞令すら、小児の心情を熱しているようで。



なんとも、面白い。








「どちらの勢力に着くかは、お決まりになりましたか?」




「うーむ……」




悩む仕草がわざとらしい時、大体は何も思考していない。




「ねえ、レイゼロ」




「?」




「アルファベット か ゼータベット、どちらでなくとも良いのかな」




溢す提案に、傾げる小首。



取り出す小枝、表す始終。




「と、言うと?」




「ワタシは昔から、選択肢をあまり好まない質でね」



「二択を迫られれば三つ目を作り、上か下かを問われれば真ん中を通る」


「無ければ、引き返す」




「随分と、天ノ邪鬼なのですね」




クスり、笑う白肌。




「ククッ」


「そう、天ノ邪鬼さ」




「私は、そんなリバティさんも好きですよ」




見下げた側。



見上げる柔肉に反射する、黒髪と気だるげなトパーズ。



本心を語る様が、癪に障る。




「どっち付かずにノンビりと、行くまま有るまま、ですね」




「あー、すまない」




「へ?」




「少々意味が違う」




臍曲がりの果ては自らを苦難させ死に曝す、救えぬ呪縛。








「アルファとゼータ、二つとも壊したい」




YES なのか NO であるのか。



頭高く尋ねた枝分かれを、粉々に折って折って折って。




「”分かたれた世界の争い”」



「なんだか、無性に気に入らなくてね」




二本を炎に放り込むも、特段の変化無し。




「そう……ですか………」




「君は君を尊重して構わないよ、殺害は勘弁願いたいが」




笑いかけるワタシに、眼前の不安顔。



不可能へ立ち向かう馬鹿を蔑んでいる訳ではなく、自己嫌悪。



己の不燃性を知る鷹、穀潰し。



行くも行かぬも荷物なら、関係ないだろうに。







「おはようございます」




「おはよう」



「……一緒に来るのかい?」




朝焼けに、賭けた決意が滲み咲く。




「貴女の自由が、好きなので」




回答は、なんとも肉抜かれた安信仰。



元居た世界に帰る機会があるのなら、彼女は持ち越したいものだ。








「ククッ、ありがとう」




脳は才能に、優劣を持たず。



されど、良質なミテクレは高値で売れる。




「それじゃあ、行こうか」




結論、美味に変わりはないが。




  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る