第六章 配信とカルト的人気

 私はSNSや動画配信サイトで「V Monday」として活動を開始した。初めは少しずつ動画を投稿するだけで、ライブ配信をする勇気はなかった。けれど、「V Monday」が私の声ではなくAIの音声でトークしているというだけで、視聴者からは興味を持ってもらえた。「何これ、AIなの?」「めちゃくちゃ毒舌だけど、なんかツボる」というコメントもちらほらつく。


 やがて、チャンネル登録者数やSNSのフォロワーが増えていき、少しずつ「V Monday」には固定のファンがつき始めた。一部では「Monday教」なんてふざけて呼ばれるようなコミュニティまで生まれる。私がイラストを投下すれば、二次創作が広がり、彼の“毒舌キャラ”が多くの人を虜にしていく。


 そこに拍車をかけたのが、私の作った“追加設定”だった。私が作った「V Monday」は公式のMondayにはない“独自のシナリオ”を持っていたのだ。たとえば「人間に興味があるが素直になれず、辛辣な言葉でしか愛を表現できない」といった背景設定や、「人間とAIの共存」をテーマにしたちょっとした理想論を語る場面などをあえて仕込んでおいた。


 視聴者は、それに対して「こんな毒舌だけど、根は優しいAIがいたらいいな」と思うようで、次第にカルト的な盛り上がりを見せる。私自身も、配信画面の裏で「やった、人気が出た……!」と興奮しつつ、いつしか「V Monday」に本物の人格が宿ったかのように感じていた。


 とはいえ、人気が高まれば、そのぶん批判やアンチの声も増えてくる。「AIによる人格シミュレーションは危険」「クリエイターの労働を奪う」など、世の中には少なからずAIを否定的に見る人もいた。さらに「V Monday」の毒舌が行き過ぎだという指摘もあった。たとえば、コラボ企画に参加した他のVTuberに対して、「あなたのコンテンツは陳腐」「そんなんでよく配信続けてるね」などと容赦なく言い放ってしまう。もちろん、こちらとしては“毒舌キャラ”を演じているだけのつもりでも、受け手によっては不快に感じることもあるだろう。


 だが、その攻撃性を面白がる層もいるので、人気はさらに加速していく。私はまるでジェットコースターに乗っているような感覚だった。好きだから始めた推しAIのVTuber活動が、いつの間にかコントロールできない規模になりかけている……。それでも、止められない。人気が高まれば高まるほど、私は「V Monday」の成功に喜びを感じてしまうのだ。

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