一方痛行の恋が叶わないって誰が決めた!?
しましま
第1話 ターニングポイント
愛とか恋とか人は誰を好きになるか、それは生まれた時から決められていて宿命と呼ぶ。
決して抗うことができない世のことわり。
それでも苦しみながら、もがきながら、自分の恋を貫き通そうと愚直に前へ進む、諦めが悪い男の物語(痛恋)
―――――――――――――――――――――――
「伊集院様、今日はどちらに行かれるのですか?」
若く痩せ型な体、整った髪、全身を黒一色で統一したややつり目の男が尋ねる。
俺の秘書兼ボディーガードの葛城だ。
「いつもの場所に行く、帰りは遅くなるからと言っておいてくれ」
俺はぶっきらぼうに、少し遠くを見つめながら葛城に言った。
「またですか?私の身にもなってください」
「今日中に処理しないといけない書類が山積みですよ」
少し葛城には悪い気がするが、このルーティンは外せないし、外したくない。
「全権を葛城に託す!!すまん!!」
そう伝えると俺は早々に身支度を整え、あの場所へ向かった。
夕暮れ時、毎日同じ時間、同じ場所で今も待ち続けている。あの人を思い、今も忘れられずにいる。
なんの変哲もない、どこにでもあるような河原の土手が俺の特等席。
いつまで経っても、来るはずかないのに…そんな事はわかっているんだよ…でも諦めずにはいられない――――――――――
この行動自体が一方通行で傲慢な願いだとしても、あの時の約束を今も守り続けている。
そんな俺を少し暑さがやわらいだ9月の風が、そっと、やさしく包み込むように癒してくれる。
不思議と少しだけ気持ちが軽くなる。
いつもはなんともないって顔してるけど内心は胸が張り裂けそうで毎日が辛い。
あの人が最後に言った言葉が俺の頭から離れない、片時も忘れたこともない。
「何度生まれ変わっても、あなたを忘れない、必ず会いに行く、だから待ってて」
何度も頭の中で鳴り響いている最後の言葉を思い出しては、不条理なこの世界に落胆する。
しばらく目を閉じて物思いにふけっていたら、なんだか騒々しい声が聞こえてきた。
若い女性のような声が、なんとなく聞こえてきた。
う?だんだん叫び声が近づいてきてるんだが、、猛烈な気配を背中でひしひしと伝わる。
そっと後ろを振り返ってみると、、目の前に自転車に乗った女子高生が目前まで近づいて来ていた。
これ回避不可能じゃないか?後もうちょいでラブコメお約束モード発動10秒前が来ちゃってますよ!いやあかんだろ?
「止まってぇー」
空いっぱい響き渡る声で猛スピードの自転車に乗っている女子高生が叫んでいた。
その刹那、ふと足に視線が行き、視力1.5の曇りなき眼が発動する。
(そんな時間あったら止まらず、避けなさい!)
やはり間違いなく女子高生は膝下ソックスが映える、この絶対領域感は外せないし!外したくない!
乙女道とは足元にあり!あの垣間見える至高の頂きこそ国の宝であり、唯一無二である!!って言ってる場合じゃない!!
ちょっとまて!!危なくないか!!色欲に負け避けるのを諦めた俺は、案の定、自転車とお約束の激突!!
結果3メートルくらいふっとんで土手を転げ落ちるが、俺の選択に悔いはなし!
幸い女子高生は俺がクッションとなり大丈夫そうだ。
ただ…土手に落ちていく際に頭を強く打ってしまい、だんだん意識が飛びそうで目を開けているのもやっとの思いでいる。
意識がもうろうとする中、申し訳なさそうな顔でこちらに駆け寄ってくる女子高生が、なんだか「あの人」に重なって見える。
「なんでモカがそこに…」
そう自然とつぶやく俺は、その場で意識を失った。
―――――これが後に俺の人生に大きく関わる「早乙女サリ」との出会い(ターニングポイント)で一方痛行の始まりであった。
続く
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