第2話 前世の記憶とモカ

 突然の衝突事故で意識を失った俺はふと目を覚めると病室にいた。


 多少頭が痛いが体は問題なさそうだ。


 辺りはすっかり暗くなっており、病室に置かれている掛け時計を見ると夜9時を回ったところだった。


 しかし…あの女子高生は、なんだが「あの人」に似てて動揺した。


 一瞬本人かと思ってしまった…それぐらい似ていたと思う。

 

 あらためて少し説明するが、実を言うと俺は前世の記憶がある。


 あれは3年前くらいだったかな?ある事件で頭を強く打った衝撃で意識を失ったが、病院で目が覚めると前世の記憶が甦った。


 その記憶とは…今から100年くらい前だったかな1925年…大正時代の記憶だった。


 あの人とは前世で恋人だった大切な人、、だからいつも「あの人」を探してしまうし、それが「モカ」であり、会いたくても会えないのがもどかしい。


 なんで?昔恋人だった人を「あの人」って言うかだって?名前を呼んでしまうと、、


 せつなくて胸が締めつけられて張り裂けそうになってしまうから、、


 思い返すと「あの人」に最初に出会った時も最悪の出会い方だったな―――――――


 そんなことを考えてると、前世の恋人に似た女子高生が申し訳なさそうに病室に入ってきた。


 「起きたのですね、お体大丈夫ですか?」

 

 一瞬目を疑った、、あの人に瓜二つの人が目の前にいて胸の鼓動が治まらない。


 なんとも言えない気持ちになり、カッと目頭が熱くなり、思わずとっさに強く抱きしめてしまった。


 「辞めてください、警察呼びますよ!」

 女子高生の声で、はっと我に返り、その子と距離をとった。


 「ごめん…」


 時すでに遅し、、やってしまった。

 めちゃくちゃ怒ってる。

 見ず知らずの人に抱き着かれたら、そりゃーああなるよな。


 「事故を起こしたのは、私が悪いけど、いきなり抱き着くのは犯罪です!痴漢です!」


 「ただ、、」

 「ただ何ですか?弁解もないんですか?」


 女子高生は犯罪者を見る目で俺に間髪入れずにまくし立てる。


 「生まれ変わりって信じますか?」 


 やってしまった!動揺したとはいえ、思ったことをすぐに口に出してしまうのは、俺の悪いクセだ!


 気付いてからは、もう遅く、さらに軽蔑の眼差しが鋭くなった。まるで汚物を見るような目をしている。


 「はっきり言います!気持ち悪いです!」


 「自転車のこともありますし…今日のことはなかったことにしますが、金輪際私に近寄らないで下さい!」


 そう言い放つと女子高生は怒って病室から出ていった。


 それから、思考回路が停止し走馬灯のように時間が過ぎていった。


 自宅に戻った時、ようやく落ち着きを取り戻した俺は、今日の1日を思い返していた。


 あの軽蔑の眼差しにガラスのハートは粉々だ…でも少し気持ち悪い発言をするが、抱きしめた瞬間、匂いや感触が「モカ」と一緒だった――――


 何度も抱きしめた感触は忘れるはずがない! あの子は紛れもなく「モカ」だ!


 やっと見つけた…俺のかけがえのない最愛の人!そう確信する伊集院であった。


続く

 

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