第7話

幸繁はベース地点に戻ってくると宇宙船の整備を開始した。

整備を怠って身動きが取れなくなるという愚を犯さない為だ。

資材はカツカツだがAIの指示の元、整備を進めていく。

幸繁は専門家というわけではないので宇宙船の整備は少しずつしか進まなかった。

最終的に整備が完了したのは1週間ほど経ってからだった。

「ふぅ。AIが優秀だからいいもののかなり無茶な計画だな」

幸繁は政治家を補佐する官僚だった為、頭が良いほうだ。

その幸繁ですら苦戦するのだ。

いくら優秀なAIがついていてもそれを生かせない囚人もいるだろう。

それを考えたらやはりこの政策は間違っている。

確かに政府が直接、殺すわけではないが物資が尽きれば死ぬことに変わりはない。

目の見える場所で死ぬか、目の見えない場所で死ぬかでの違いしかないだろう。

追放された身ではあるが他の追放者が無事であることを祈ることしかできなかった。

「さて・・・。ジャガイモの育成はどうかな?」

農場となっている建物の中に入るとジャガイモの芽が出ていた。

「生育は順調かな?うまくいけば主食はどうにかなりそうだな」

幸繁は今後のことを考えて他の野菜の種も撒くことにした。

「家庭菜園で定番といえばトマトだよな。他にもいくつか撒いておこう」

幸繁はAIの指示に従って農作業を終わらせる。

「ふぅ・・・。農作業なんて誰でも出来るなんて言ったやつは誰だよ。普通にきついぞ」

作業を終えた幸繁は全身に汗だくだ。

「取りあえずシャワーでも浴びるか」

幸繁は宇宙船に戻り服を脱ぐとシャワーを済ませる。

水は貴重だが不衛生にして病気になるよりはマシだ。

「この後はどうしようかな?」

普通に考えれば惑星の調査をして住める場所を探すべきだろう。

だが、この辺には住めそうな惑星はなさそうな気がしている。

地球とはそれなりに離れてはいるが住める星があるならとっくに誰かが見つけているだろう。

「よし。活動範囲を広げるために燃料の補給装置を増やすか」

方針が決まれば後は実行するだけだ。

資材をかき集めてなんとか燃料の補給装置を作れるだけの資材を宇宙船に詰め込みベースを出発する。

「こっちの方はまだまだ未探索だったな」

幸繁は宇宙船を地球から離れる方向に向けて燃料の補給装置を設置するのに良さそうな場所を探すことにした。

残念ながら今回も人の住める星はなさそうだ。

燃料を半分消費したところで燃料の補給装置を設置する。

この場所でどれぐらいの燃料が確保できるかは未知数だが放置しておけばそれなりに燃料が集まるだろう。

燃料の補給装置を設置した幸繁は真っ直ぐベースに戻るのだった。

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