俺はダークキングを追って、深い森の中を進んでいた。しかし、しばらくするとネズミがキーキーと騒ぎだす。


「あれはケンタウロスの村です」


 ネズミの指さす方向をみると、そこにはいくつかの木造住宅が並んでいた。かなり古そうだ。


「ケンタウロスは勇敢な種族です。ダークキングを倒すのを手伝ってくれるでしょう」


「ケンタウロスが俺を助けるだと? 奴らは友好的なのか」


「礼儀を知っている者には友好的です」


「ワーオ」俺は手をこすり合わせた。「それは少しチャレンジングだな」


 俺は下馬し、ケンタウロスの家の巨大なポーチに向かった。ネズミは俺のポケットの中に隠れている。喋るネズミを肩に乗せた男がドアの前に立っていたら、ケンタウロスでなくとも身構えるだろうからだ。


「こんにちわ、ケンタウロス」


 俺はドアをノックして言った。すると、2メートルほどのケンタウロスが家の中から現れた。すばらしい筋肉を持っており、実に力強そうだ。


「お前は誰だ」ケンタウロスが言った。


「俺はダークキングを倒そうとしている人間だ。あなたはとてもタフな男に見える。協力してくれないか」


「私は女だ」ケンタウロスが答えた。「お前は無礼だ。この場で倒す」


 交渉は失敗した。ケンタウロスは槍を握り、おそるべき加速で俺に突撃してきた。ドラゴンよりも速い。俺は攻撃を回避したが、門の外まで吹き飛ばされた。


「ケンタウロスを怒らせた。逃げるぞ、ネズミ」


「あなたは愚かです」ネズミも怒っていた。「こんな結果になることを知っていれば、私をあなたの汚いポケットに隠れていなかったでしょう」


「前の世界では、ケンタウロスをどうやってデートに誘うかなんて、誰も教えてくれなかったんだ」


「まるで教えてもらっていたら、うまくいったかのような口ぶりですね」


 俺はネズミの挑発を無視し、馬に乗って逃げた。だが、ケンタウロスはまだ追ってくる。ケンタウロスは馬よりも速そうだ。くそ、こんなバカげたホース・チェイスが始まるとは!


 しかしそのとき、俺の隣で突然いらいらさせる声がした。


「ハハ! 興味深いことをしているな」


「ダークキング!」


 ダークキングは魔法を使って、俺の隣を飛んでいた。ダークキングは俺をあざけった。


「愚か者め。こんなところで死にかけている。いい気味だ」


「どうしてここにいるのだ、ダークキング!」


「みじめな死体を見に来たのだ。だが、少し早く着きすぎたようだな」


「嫌らしい趣味を持っているな。しかし、みじめな死体になるのはお前だ!」


 そう言って、俺は馬の上で剣を取り出した。だが、ダークキングは俺の剣が届かないくらい遠くを飛んでいる。これもダークキングの挑発なのだ。


 そのとき、俺は一つのアイデアを思いついた。


「少し速度を落とすぞ、ネズミ」


「危険です。ケンタウロスに攻撃されます」


「いや、ケンタウロスは俺を助けてくれる」


 俺が速度を落とすと、ケンタウロスは俺に向かって槍を突いた。その瞬間、俺はケンタウロスの槍を奪った。そして、俺はその槍でダークキングを突いた。槍は剣より長い。


「なんだと!」ダークキングは目を見開いた。体に槍が刺さっている。


「油断したなダークキング!」


 だが、ダークキングは倒れなかった。ダークキングの体の輪郭がぼやけ、やがて消えてしまった。魔法でできた幻だったのだ。


「卑怯者め!」俺は悪態をついた。「倒したと思った俺が愚かだった! ダークキング、真面目に戦え!」


「ダークキングは聞いていません。早く彼の城に行きましょう」


 ネズミに促され、俺はみじめな気分で再び森を進み始めた。

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