“夢幻の回生”との邂逅 Ⅱ
オネイロスと話し始めること、数十分。
「好きなゲームね、雰囲気フリゲも好きだし…パソコンで日本製のソシャゲもやってたりするんだよ、ゲームを遊ぶためのパソコンが普段使いのやつよりちょっと不便だけど、改造ってよくないからさ…」
「ちゃんと人間の作ったソシャゲやってるんですね、律儀だ」
「主に人間くらいしか、こういう生きるために必要だけど生きるためには必要じゃない娯楽の類は作らないからね…感謝してるよ、マジで」
なんだか、深いことを言ってる。
――
さっきはめちゃくちゃな迫り方をしたからそれでパニックを起こしてたのが、好きなジャンルの話になってちょっと気持ちが落ち着いたのだろう。よかった、と胸を撫で下ろす。
「ミリドルの中では誰好きですか、1000人もいたらある程度担当がいっぱいいそうですけど」
「ゆずと菜々子が好きかな……、あと霧華」
「霧華さんいいですよね、ギャップが特に」
会話の最中で少しずつ、彼の表情と――『目』を観察する。
彼の瞳はカラフルな飴のような、不思議な色をしていた。
(黄緑、紫、黄色…)
瞳をじっと見ていると、意識の遠いところから声がかかる。
「……ちょっと、パーソナルスペース激狭案件かも。おまえさ、ちびっこだけど一応女の子では……いやこれセクハラか。殺される、兄に。」
「好奇心の化身で申し訳ないです、マジで。珍しいお目々してたので気になっちゃいました、すみません。……でも。」
「…でも?」
オネイロスが少し首を傾げて話す。
「多分わたしのことよりオネイロスさんの方が大事ですよ、あの人たちは。だから平気です」
「……。」
黙り込んだ彼のその視線からじわりと疑念が滲むの感じ取る―いや、違う。これは……哀しみだ。
「…あの人等っていつもそうなんだよ。おれは、あの人等のことをよく覚えてないし、おれが忘れ去った簡単な魔術式の使い方を勉強し直させてくれたけど、おれはあの人達のことをなにも覚えてない。なのにあっちはずっとおれを見捨てず世話を焼く。意味わかんないんだ」
なんだか、身に覚えがある言葉だ。
「……すごく在り来りなこと言うと、大事な家族だからじゃないですかね。損得勘定とか利害の一致じゃない関係というか、むしろこれをそんな目で見たら終わる、みたいな。」
わたしもそうでしたよ、と零すと、オネイロスが驚いたようにわずかに目を見開く。
「私もめちゃくちゃカスみたいな社会不適合者で学校にもトイレにも図書館にも、どこにもいられなかったけど親にもう見捨ててよって言っても見捨てられなかったんです。これって理屈じゃなくて、ひとの営みの中にある、無条件の愛なんです。きっと」
その言葉に呆気にとられたように目を瞬かせる、彼がいた。
「シオン…」
「…だから。
「……!?、え」
がくん、と体勢を崩すオネイロスの頭を、受け止めて優しく撫でる。
「…段々とわかってきました、発動の呪文みたいなのがあるんですねこれ。これを意識して出せたら完璧かも」
『いいぞ、ガキ!前とは違って制御も余裕も出来てるじゃん。でもオネイロスのこと傷つけやがったら殺すからね』
「めちゃくちゃ善処します、それは」
眷属――通信機からするヒュプノスの声に応答しながら、未だに訳が分からないという顔をしているオネイロスの――瞳を眺めて、意識が一度ブラックアウトした。
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