第4話 ゲンとゾーンA
ゾーンBにはアンドロイドがいた。
人間とアンドロイドは共存して暮らしていた。
人間はアンドロイドを管理し、アンドロイドの応答に人道的な思想が確実に入り込むことを保証する「安全期限」を設けていた。
安全期限は最大でも10年で、それをすぎればアンドロイドは処分しなければならなかった。
ゾーンBの人間であるゲンはある日、世界を区切る壁に一つの穴を見つけた。
修復所に連絡するとそこで待つよう言われたゲンは、好奇心からその穴をくぐった。
穴は暗かった。人ひとりがかがんで通れるくらいだった。
ゲンが3分間ほふく前進をした先にあったのは、ゾーンBと全く変わらない街並みだった。
それは本当はゾーンAであったが、ゲンは約3分のほふく前進で本当に疲れていて、ゲンの脳はゾーンBだと解釈した。
ゲンはゾーンAには行けなかったのだと思った。ゾーンBの中に高い建物か何かがあって、その中の穴を通ってきたのだと思った。
それを世界を区切る壁だと勘違いしたのだと。
ゲンは息を整えようと穴の前に座り、修復係が来るのを待った。
1時間後、ゲンは誰も来ないことを不思議に思った。
ふと後ろを見ると、壁の穴はなおっていなかった。
ゲンはもう一度入って戻ろうと思い、もう一度穴に入った。
2分ほど進むと、目の前にもう穴はなく、途中で塞がれていた。
暗闇でわからず、ゲンは頭を打った。
触ってみれば、既に固まった粘土のようなもので修復した跡があった。
もうその穴は完全に塞がっていて、ゲンがどれだけ力を加えても何にならなかった。
ゲンは仕方なく戻り、穴から出た。
ゲンはもう一度呼吸を整えた。そのあと見渡せば、後ろには高い高い壁がそびえ立っていた。
ゲンの心臓は嫌な音をたてた。
ゲンはゾーンAに閉じ込められた。
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