第4話 引きこもり生活のアイリ
「ピーちゃんって、何を食べるのかなー? 虫?」
「ぴー」
「あ、なんだか違うっぽい? WEBで検索したらわかるのかな?」
ピーちゃんと共に部屋へ戻り、パソコンの前へ。
生まれたてだけど、私のところまで飛んで来たり、私の言葉が分かっているような感じだったり……やっぱり異世界の凄い鳥さんなのかも。
検索してみたけど、似たような鳥は見つからないし。
白鳥の雛が、モフモフ具合は似ているんだけど、色が全く違うし、足も違うように思える。
とりあえず、鳥の餌で検索してみたんだけど……そもそも鳥の種類によって、食べる物が違うみたい。
「んー、とりあえず何かネットで買うとして……今、ピーちゃんが食べられそうなものは何だろう?」
流石にチョコやクッキーなんかのお菓子を与えるのはダメだと思うので、今家にある物を……バナナでも良いのかな?
「ピーちゃん。バナナ食べる?」
「ぴぃ」
バナナの皮を剥いて小さく切ってあげると、美味しそうに食べ始めた。
その間に、私もお昼ご飯を作り……あ、ピーちゃんが寝てる。
お腹がいっぱいになって眠ってしまったのかな?
クッションの上で幸せそうに眠っているので、私も次作の構想を……って、ちょっと待った。
異世界へ転生してから数日経って、ようやくベランダに出てピーちゃんの卵があった事に気付いた訳だけど、私はまだ玄関から一度も外に出ていない。
この家の外観がどうなっているかも知らないし、他にも想定外の何かがあるかもしれないので、一応確認しておこう。
パジャマが汚れたら嫌なので、一応普段着に着替え、いざ外へ!
「……あ、普通にアパートだ。相変わらず正面は青空と森だけど」
私の住んでいた二階の一番奥にある五号室だけが、異世界に再現されているのだと思っていたけど、どうやら二階建てのアパートが丸ごと再現されているみたい。
なので、通路の脇に四つの扉があり、その先には降りる階段がある。
外側へ目をやると、アパートの周りを囲うブロック塀と小さな門があり……何も置かれていない駐輪場や、ゴミ捨て場に小さな物置まであるので、敷地内をそのまま再現したようだ。
……さ、流石にお隣さんはいないよね?
念の為確認しておこうと思い、ドキドキしながらインターホンを押してみる。
――ピンポーン――
少し待ったけど、何の反応も無いのでドアノブを回してみると……開いた!
「お、おじゃましまーす」
四号室に入ってみると、私の部屋とは左右が逆転した1DKの部屋になっていて……うん。誰も居ないし、最低限のものしか無い。
備え付けの小さな靴箱があって、キッチンにテーブルと椅子が二つ。水は……出た。
奥にお風呂とトイレがあって、もう一つの部屋は私と同じ和室になっている。
押し入れとクローゼットがあって、ベランダへ続くガラス戸の上にエアコンが取り付けられていた。
「私が入居した時の状態と同じみたい……って、これはこの部屋の鍵かな?」
テーブルの上に同じ鍵が二つ置かれているんだけど、私も不動産屋さんから、最初に鍵を二つ渡されたような気がする。
一応、他の部屋も……という訳で、三号室から一号室まで見ていったけど、全く同じ状態だった。
階段を降りて、一階の部屋も確認し……どれも同じだ。
とりあえず、ドアの鍵が開けっぱなしだというのは不用心なので、一応全ての部屋に鍵を掛けておいた。
鍵には部屋の番号が書かれているし、間違う事もないだろう。
あと、これも快適生活魔法の効果なのかもしれないけど、どの部屋も……というか、このアパートの外観も物凄く綺麗になっている。
築四十年くらいのアパートなんだけどなぁ。
「とりあえず、神様が言っていた通り山の中に建っているみたいで、周囲には何も無さそうだし、執筆に専念出来そうね」
アパートと周辺の確認も済んだので、二階に上がって五号室の扉を開けると、私に向かって何かが飛び込んできた!
「ぴーっ!」
「あ、ピーちゃん! 起きて、私が居ないから不安だったのかな?」
「ぴぃ……」
「ごめんごめん。用事も済んだし、部屋に戻ろう」
悲しそうにしているピーちゃんの頭を撫で、そのままパソコンの前へ。
膝の上にピーちゃんを乗せながら、次作の構想を考え……安心したのか、ピーちゃんが眠りに就いた。
……そうだ! 次の話はモフモフを出そう!
モフモフと言えば狐? それとも猫? ……何となくだけど、犬にしようかな。
そんな事を考えつつ、翌日にはネットで注文したピーちゃんのご飯や、鳥さんグッズが届く。
鳥の餌や果物なんかは凄く美味しそうに食べてくれるんだけど、残念だったのが吊るすタイプの止まり木。
ブランコみたいに遊んでくれるかな? と期待したんだけど、私の膝の上が定位置になってしまい、殆ど乗ってくれない。
ただ、ピーちゃんはかなり賢いようで、執筆中は膝の上で眠っているけど、私が食事を作ったり、洗濯していたりする時はクッションの上で座って待ってくれている。
とにかく手が掛からず、執筆を阻むような事もないので、これまで通りWEB小説を書く日々を過ごしていたんだけど……数日経って、想定外の事が起こった。
「失礼する! ここには誰か住んでいないだろうか! 暫し休ませてもらいたいのだが!」
えぇぇぇっ!? 突然、外から男性の大きな声が聞こえてきたけど、何っ!? 何なのーっ!?
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