第9話 ここは現世か?あの世か?
「よせ」
俺は、声が枯れそうなくらい叫んだが、チェーンソーの音はそこにはなかった。
あれ?
ここ、どこだ?
「う、うう」
「先生、起きました」
照明?
白衣の人々?
なんだよこれ
「なあ、君、何者なんだ?」
「先生、なんでこの子生きているんですか?」
何を言っているんだ。
もちろん、俺は、生きているさ。
確認しないといけない。
ここはどこなんだ?
「あの……」
目をつむった間に、数時間が経過したみたいだった。
知らない男がいた。
「喋らないほうがいい」
え?なんで?
「君、飛び降りたそうじゃないか」
「医学でも、形而上学でも、説明がつかないんだ」
どういうことなんだ?
「あの高さから、飛び降りて死ななかったなんて……前代未聞だよ」
「日下部君、これ、何本に見える?」
……日下部は俺の姓だ。それは、覚えている。
だが、なんで俺は、車に乗っているんだ?
「日下部君?」
その人物が指を3本折り曲げて、ピースのポーズをしていた。
「2本です」
「視力は問題ないみたいだね」
俺は、脳やら、内臓やら、器官の検査をしたが、異常なし。
「なんとも、興味深い。イエス・キリストの生まれ変わりでは?」
「俺は、ただの大学生です」
「日下部君、君に訊きたいことがある」
「なんですか?」
「君は、神の存在を信じるかね?」
「そ、それは……」
神……全知全能、人間をつくった存在。
様々な国で、宗教で、伝説として、語り継がれてきた。
なぜ、神の話をここでするんだ?
だが、その話の先を聞くための答えは、決まっている気がした。
「……信じます」
「なぜ、そう思う?」
「……ビッグバンは人為的に起こされたものだからだと、思うからです」
自分でも、言っていることがよくわからなかった。
そもそもビッグバンとは、理論上や、物理学でも、説明がつくほど、超自然的な事象であり、宇宙の存在や、始まりを裏付ける、何よりの証拠であるが、人為的に起こされたものっねえ。
俺も、嘘をつくのが下手になったな。
「日下部君、行こうか」
「え?どこに行くんですか?」
「決まっている。私たちのユートピアだ」
ユートピア?なんだろうか。ちょっと待て、今までの記憶が有耶無耶になってる。
俺は、ナギサちゃんに相手にされなくて……あれ?どうしたっけ?
『豚は、牧場にでも行けよ』
ユートピアってなんだっけな。
牧場じゃないよな……
あれ、なんか、体が軽い。
俺、日下部シン。
だよな?
お手洗いに行きたい。と、その人物に言い、鏡を見た。
名前も同じ。
顔も変化していない。
だが、俺の体型は変わっていた。
ひどく痩せている。
「俺、本当に誰なんだ?」
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