第21話 太平洋で2

 ある日、Aさんが甲板に出てみると仲間が数人海を覗き込んでいる。

海洋上で点検とかでエンジンは止まっていたそうだ。


「おーいA見てみろサメがいるぞ」

「え本当?」まだ10代だったAさんが下を覗き込んだら

生ゴミなどを捨てたらしくサメが5・6匹泳いでいるのが

見えた。

Aさんは、いきなり突き落とされた。

―ドンッ、バシャーン・・・


突き落とした先輩は40歳超えたベテラン船員だった。

「ギャハハハハーッ」

大声を出して笑っている。

落とされたAさんは自分の足にサメの感触があった。

―ヌルリ、ドン、ヌルリ・・・

慌てて

「たすけてくれえーっ!」と叫ぶと縄梯子が垂れ下がってきた。

何回かサメの感触を足に感じながら急いで泳いで

縄に掴まり登って行き、甲板に戻った。


 なんとか無事だった。


Aさんは腹を抱えて笑っている奴ら、頭にきたが、

グッとこらえたんだそうだ。

 身長175cmでボクシング経験者だったAさん。

「殴っても良かったけど寝てる時にコッチを襲うような

卑怯者の人○しだったからな・・・」

「もしサメに襲われてたら死んでたかもしれませんね

何で平気なんですかみんな・・・」

「それだけなんも考えてないんだって馬鹿だから」

「死んだらどうすんですか?」

「なんとも思わないんだろう、暇つぶしだったんだろ」

「えぇー?・・・」

「もう一回何かあったら、そいつ○そうと思っていて、

比較的、仲のよかった奴とスグそんな話してたんだけど・・・」

「どうなったんですか」

「その日以来、俺に悪さしてこなくなったんだ、

よっぽど怖い顔したんだと思うよ、俺・・・」

「それじゃ漁船じゃなくて○し合いじゃないですか」

「うん、そうなんだ」

「いや、良かったですね○人犯にならなくて」

「まぁな、危なかったよ、あの時、自分を良く抑えたと

思って・・・」

「はい・・・」


それから間もなく彼らの漁船が外国の海域で違法操業して

無線で通報されてしまい

海軍に拿捕されブラジルまで連れて行かれてたんだそうだ。


当時、大きなニュースになったらしい。


さて、この話、私は嘘ではないと思っているが

みなさんは、どう思いますか



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