第2話 再会はトツゼン!

学校のフェンス沿いに並ぶ、葉桜となった桜並木横目にチラリと校舎を見る。


この2年間、僕は教室でただ息をしていただけだったように思う。

大きな波も、小さな波も、何事も起きないようクラスメイトや他の生徒たちとの関係から目を逸らし、独りを謳歌していた。


それで良かったし、正直、楽だった。

でも、


それじゃダメなんだ


中学生活最後の1年、僕はこれまで人との繋がりを大切にしてこなかった分、取り戻さないといけない。少しでも――


そして、普通に喋れる友だちをつくる!


でもまずはクラス分け。

僕にとってもう一つ、譲れない矜持みたいなものがある……


僕は、気合を入れ直し、生徒たちでごった返す昇降口に向かった。





――





「え…………」


マジか……


新学期恒例のクラス分け。

表を見ると


【3年1組2番 愛善 幸也アイゼン ユキヤ


僕の唯一の自慢

いや、自己満足でしかないんだけど


小学1年生から中学2年まで、ずーっと1組で出席番号も1番!

義務教育の間、いや高校に入たって記録を延ばしたかった。


【3年1組1番 藍川 伊織アイカワ イオリ

こいつのせいで僕の記録が閉ざされてしまったのだ!


いや、1番が好きってわけじゃないよ?

でもここまでずっと1組1番だったんだから、最後まで綺麗に1を並べたいじゃないか!





「キャー藍川さんとオナクラじゃん!」


「うん、よろしくね」


藍川伊織の席の周りに来てはしゃぐ陽キャたち数名。

この藍川ってやつも、この陽キャたちのお仲間なのかな。


「でさ〜ミホだけ3組になっちゃってマジでウケるんですけど〜」


いや。

クラス分けでウケるとか皆無なんだが?


女子たちの考えることは本当に分からない……

分からないからどうやってコミュニケーションを取ったら良いのかもさっぱりだ。


い、いや、ダメだ!

今年こそ友だちを作るって決めたんだ!

女子とも喋るんだって誓ったじゃないか!


「キャハハ!えぇーやだー」


ドンッ


藍川伊織の周りにいた女子の1人がはしゃぎ過ぎて僕にぶつかってきた


おふッ


「あ、ごめーん」


「……(大丈夫です)」


言葉が出ないー!


「誰?知ってる男子?」


「ううん、知らないー。ていうか、いるの気付かなかった」


取り巻き女子たちがコソコソと言っている。

いやいや聞こえてるからね?!


チラリと視線を上げると藍川伊織がじーっと僕を見ていた。




ドクンッ




整った目鼻立ち


透き通る白い肌


流れる艶やかな髪の毛





なるほど

この子の周りに人が集まって来てしまうのは

なんとなく分かってしまった




「あれ?なんだよ……幸也がいるじゃねぇか」


「あんたクラス分け表で名前見なかったの?」


「どうせ俺の出席番号最後の方じゃん?表の下の方しか見てなかったわ」


聞き覚えのある声が遠目から聞こえてきて、僕は我に返った。


あれは……


僕のトラウマの原因である2人

漆原 佳奈ウルシバラ カナと、我妻 将吾ワガツマ ショウゴ……


僕も同じだ……クラス分け名簿の上の方しか見ていない。

出席番号が1番でなかったショックで他のクラスメイトの名前なんか全然見てなかった。

よりにもよって最も関わりたくなかった2人が中学最後の年で同じクラスになるなんて……!

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