(3)ウィンクできない
昼職の初の出勤日。この日は
開口一番、今日はびっくりしたよ、と目を丸くするアンタ。わたしがアンタの会社から出てきたとき、ずいぶん似た人がいるなと思ったそうだ。人違いだと思ったけれど、わたしのもってるトートバッグが目に入ったんだって。そのバッグ、わたしが家電量販店でノートパソコンを買ったときにも使ってたから、わたしだと気づいてくれたみたい。
アンタがびっくりしたように、わたしもびっくりした。それはアンタがウィンクしてきたから。この人なに?と思うのと、それがアンタだと気づくのが同時だった。ウィンクできていいな、と思ったところでコケたといったら、アンタはケタケタ笑ってた。ひとの不幸でわらうな。
だけど、わたしもアンタにウィンクを返したかったな。ウィンクできないんでアンタに返せなかったと伝えたら、アンタの言い草がふるってた。ウィンクできないなら両目をつぶればいい、あとはくちびるを重ねあわせるだけ・・・・・。
おもしろくない!あの場でわたしが両目をつぶったら歩道の段差でコケるだけじゃすまなくて、お
それでも、わたしはアンタがきてくれてうれしかった。やっぱり昼間は緊張してたんだろうな。アンタの顔を見て、ふわっと
アンタもわたしに気を使ってくれて、びっくりしたという話のほかは昼職のことを聞いてこない。かわりにまた今度いっしょに食事に行こうと誘ってくれるけど、これはどこまで本気なんだろう。それに同伴で食事にいっても
そしてつい、アンタ、きたばかりなのに次の予定を決めようとするのは、今日もすぐに帰るから?なんて憎まれ口をたたいちゃった。かわいいくないな、わたし。アンタは話が盛り上がると次の予定を決めるのを忘れるっていいわけをして、もし次の予定を決めるの忘れてたら帰り際に教えてくれっていってきた。だけどそれって、わたしのほうから誘ったら、
結局、アンタは最近食べた美味しいものの写真をみせながら、その時の話を聞かせてくれた。たぶん、次の同伴で行くならどこがいいか、わたしの反応を見てたんだと思う。どの写真も美味しそうだったけれど、だれかとふたりで行った雰囲気の写真が多かった。わたしは写真に写った料理より、そっちのほうが気になってしかたがなかった。
(つづく)
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