第24話 初めての授業

「うぐ…うぐぐぐぐぐ」


「おいそこぉ!空気椅子がなってない!」


「ひぃ〜!」


クラムがハゼラ教官に怒られる。

今は5分休み、だというのに、ハゼラ教官はあたしらに空気椅子をするように命じた。



「ほらほら、授業が始まるまであと3分もあるぞー?」


「鬼ぃ」ボソッ


「なんか言ったか!」


クラムは勇者だな、と思いつつ、あたしも足が限界に来ていた。

本来、S級隊員がもっとも使う筋肉は、ミミズを切り落とす腕だ。

だから、足の筋肉はあまり使うことがない。


「よし、椅子を用意した。座ってよし。」


「「やったぁ!」」


5分休みが終わり、ついに授業が始まることになった。

流石の鬼教官も授業中は空気椅子じゃないらしい…と思ったが…


「てめぇら、空気椅子じゃないのは最初の1週間だけだからな!わかったか!?」


「「はいっ!」」


やっぱり、ハゼラ教官は変わらない、と懐かしく思う。


「これから、授業を始める。教科書を用意しろ!」


みんなが一斉にカバンから教科書を取り出す。今回、学校で学ぶのは、


・地上学

・防衛学

・攻撃学

・心理学


の4つだ。なぜ心理学も学ぶかと言うと、初めての地上でメンタルを壊してしまう者のケアをするため、だそうだ。


このことが、より一層地上の危険さを知らしめてくる。



「一限は地上学だ。てめーら地上のすゝめを出せ。」


“地上のすゝめ”

この教科書は、最初クラムに見せてもらった教科書だ。

学外の者には見せられない、貴重な資料が揃っている。


すると、ハゼラ教官がいきなり真剣な面持ちになり、話し出す。



「…いいかてめーら。地上は、危険だ。」


「はい…。」


「…現に…、俺の仲間は、地上へ行き、行方不明になった。」


「…え…。」




「……」



「……俺らは昔、無断で地上へ行ったことがある。」


「…え…?」


突然、衝撃の告白。

そうだ。おかしいと思ったんだ。

何故なら、“伝説の清掃員”は、ミミズに喰われて死んだことになっているから…。


「ち、地上へ行ったのは直近で50年前なんじゃ…?」


カナリアが質問する。

ハゼラ教官は目を細め、グッと腕に力を入れた。


「だから、無断で、だ。」

「月華輪渓谷から、無断で、な…。」


「そんな…。」


「いいか…、これから地上について説明する…。よく聞け…。」



ハゼラ教官が話した内容は、悲惨,絶望そのものだった。



「まず、地上はとても寒い。そして眩しい。」

「さらに、β線が濃く常に息苦しさを感じる。」


「ここで気をつけて欲しいのが、“β線中毒”だ。」


β線中毒…。


「俺の仲間はこれで3人死んだ…。」


「死んっ…」ゾワッ


「人は…脆い…。ちょっとした事で簡単に死んじまう。だから、てめぇらも仲間を大事にしろよ…。」


その他にも、ハゼラ教官は色んなことを話してくれた。


ミミズが普通のよりも遥かに強いこと。

古代の都市のようなものがあること。

でも、ある場所はとても美しい景色がある、ということ。


ハゼラ教官は、一通り話し終わったあと、一息着いてまた話出した。


「俺らの過ちは…、許されるものじゃない…。」


「だから…、こうして、死んだ者として罰を受けている…。」


「でも、これだけじゃ償えない…。」


「お前らには死んで欲しくない…。だから、ビシバシ行くから覚悟しろよ…。」


「…っ。はいっ…!」



ハゼラ教官の辛い思いがこっちまで伝わってきて、しんみりとした空気になっていた。


ハゼラ教官はこんなに反省している。

しがらみが、解ければどんなにいいか…。


「っし!なんか変な空気になったな。すまない。」


「お前らは必ず生きて帰ってこいよ。約束だ!」


「「っ!はいっ!!」」



こうして、初めての授業が終わった。

地上学…。とても参考になる話ばかりだったな。


よしっ、これからも頑張って、絶対生還するぞ!!

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